緩和ケアを受ける進行癌患者に対する持続的鎮静は生存期間の短縮とは関連していない

緩和ケアを受ける進行癌患者に対する持続的鎮静は生存期間の短縮とは関連していない_e0156318_1040354.jpg 素晴らしい研究です。
 CDS群の生存期間中央値は27日。これは鎮静開始からではなく、緩和ケア開始からの日数であることに注意して論文を読む必要があります。鎮静後の生存期間に差のないということが証明されたわけではありませんが、個人的には差がないと思っています。

Maeda I, et al.
Effect of continuous deep sedation on survival in patients with advanced cancer (J-Proval): a propensity score-weighted analysis of a prospective cohort study.
Lancet Oncol. 2015 Nov 20. pii: S1470-2045(15)00401-5. doi: 10.1016/S1470-2045(15)00401-5. [Epub ahead of print]


背景:
 死亡前の緩和ケアの一環としての持続的鎮静:Continuous deep sedation (CDS)は、強い議論の的であり、特に生存期間を短縮するのではないかという懸念があった。われわれは、傾向スコアマッチを用いて、CDSが患者の生存期間を短縮するのかどうか、またCDS中の輸液負荷の効果が生存期間にもたらす効果を調べた。

方法:
 これは日本の58施設において2012年9月3日から2014年4月30日まで登録された、大規模多施設共同前向きコホート研究の二次解析である。20歳以上の緩和ケアを受けた進行癌患者がこの二次解析に登録された。アウトカム変数のデータがない例、180日を超えて生存した例は除外した。CDSを受けた患者と受けなかった患者の登録後の生存期間を比較した。登録時の患者特性、病状、症状をコントロールするために傾向スコアマッチを用いた。

結果:
 2426人の進行癌患者が登録され、289人(12%)が180日を超えて生存し、310人(13%)がデータ確認ができなかったため、残りの1827人で解析がおこなわれた。そのうち、269人(15%)がCDSを受けた。生存期間中央値は、CDS群で27日(95%信頼区間22-30日)、非CDS群で26日(95%信頼区間24-27日)であった(差中央値-1日[95%信頼区間-5 to 4]; ハザード比0.92 [95%信頼区間0.81-1.05]; log-rank p=0.20)。傾向スコアマッチをおこなうと、これらの数値はそれぞれ22日(95%信頼区間21-24)、26日(95%信頼区間24-27)となった(差中央値-1日[95%信頼区間-6 to 4]; ハザード比1.01 [95%信頼区間0.87-1.17]; log-rank p=0.91)。年齢(pinteraction=0.67), 性別(pinteraction=0.26), PS(pinteraction=0.90), 輸液量(pinteraction=0.14)は鎮静と生存期間の関連に影響を与えなかったが、ケアセッティングは有意な影響を及ぼした(pinteraction=0.021)。

結論:
 緩和ケアを受ける進行癌患者におけるCDSは、生存期間の短縮とは関連していなかった。また、こうした状況ではCDSは緩和ケアの選択肢として一考に値する。


by otowelt | 2015-12-08 00:05 | 肺癌・その他腫瘍

近畿中央呼吸器センター 呼吸器内科の 倉原優 と申します。医療従事者の皆様が、患者さんに幸せを還元できるようなブログでありたいと思います。原稿・執筆依頼はメールでお願いします。連絡先:krawelts@yahoo.co.jp


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