ICSが効きにくい気管支喘息
2016年 01月 20日

気管支喘息の患者さんの30%ほどがICSに反応しにくいとされています。これは遺伝子や環境などさまざまな原因が考えられますが、環境因子として重要なのは何でしょうか?・・・・・そう、たばこです。
たばこを吸っている喘息患者さんはICSが効きにくいので注意して下さい。ICSを受けている喘息患者さんの朝のピークフロー値で喫煙者と非喫煙者で25L/分 (95%信頼区間4~45)の差があったという報告もあります(p = 0.019)1)。メタアナリシスでもたばこは1秒量を低下させる有害性が示唆されています2)。呼吸器内科の世界では、残念ながらたばこイコール絶対悪です。喫煙は、一部の過敏性肺炎を除いてほぼすべての疾患の症状増悪リスクを上昇させます。
さらに知っておきたいのは、高齢者はICSに効きにくいといことです。これは確定的な知見ではありませんが、私も実臨床で非常に難渋することがあります。高齢者特有のアドヒアランスの問題が挙げられます。これは如何ともしがたい事実です。また、加齢による免疫学的な事情もあるのかもしれません。たとえば、若年者はTh2細胞が優勢でICSが効きやすいのに対して、高齢者の場合はTh2細胞の関与が乏しいのではないかとされています(Th2細胞が優勢でありながらICSが効きにくいサブグループもおり、現在議論は混沌としています3))。そのため、インターロイキンなどのサイトカインに対する治療が高齢者には有効なんじゃないかと考える研究グループもいます。
ICSが効きにくい喘息として、気管支喘息とCOPDの合併であるACOSも忘れないで下さい。COPDが主体のACOSの場合、ICSが効きにくい。というか、COPDの症状は劇的に改善するものではないので、“COPD寄りのACOS”はICSではなかなか太刀打ちできないのが現状です。
(参考文献)
1) Tomlinson JE, et al. Efficacy of low and high dose inhaled corticosteroid in smokers versus non-smokers with mild asthma. Thorax. 2005 Apr;60(4):282-7.
2) Zheng X, et al. Smoking influences response to inhaled corticosteroids in patients with asthma: a meta-analysis. Curr Med Res Opin. 2012 Nov;28(11):1791-8.
3) Anderson GP. Endotyping asthma: new insightsinto key pathogenic mechanisms in a complex, heterogeneous disease. Lancet. 2008 Sep 20;372(9643):1107-19.
by otowelt
| 2016-01-20 00:38
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