フルチカゾン+サルメテロールはフルチカゾンと比べて重篤な喘息関連イベントのリスク上昇をもたらさない

フルチカゾン+サルメテロールはフルチカゾンと比べて重篤な喘息関連イベントのリスク上昇をもたらさない_e0156318_946195.jpg 少なくともLABAはICSと併用しておれば大丈夫だという結論です。

David A. Stempel, et al.
Serious Asthma Events with Fluticasone plus Salmeterol versus Fluticasone Alone
NEJM, March 6, 2016DOI: 10.1056/NEJMoa1511049


背景:
 喘息治療に対する安全で適切な長時間作用性β2刺激薬(LABA)の使用については広く議論されてきた。2つのランダム化比較試験において、LABAによる重篤な喘息関連イベントの潜在的リスクの存在が報告された。この研究では、LABAのサルメテロールに吸入ステロイド薬であるフルチカゾンプロピオン酸エステルを併用することのリスクを評価した。

方法:
 多施設共同ランダム化二重盲検試験において、思春期から成人の遷延性喘息患者(12歳以上)のをランダムにフルチカゾン+サルメテロールの併用治療あるいはフルチカゾン単独治療のいずれかに26週間割り付けた。患者は、ランダム化の前年に重度の喘息発作を経験しているが、1か月以内には起こしていないことを条件とした。致死的喘息あるいは不安定喘息の患者は除外された。プライマリ安全性エンドポイントは、初回の重篤な喘息関連イベント(死亡、気管挿管、入院)とした。重篤な喘息関連イベントの非劣性マージンは上限値2.0。効果エンドポイントは、初回の重度の喘息発作とした。

結果:
 11679人の患者が登録され、67人に74の重篤な喘息関連イベントがみられた。内訳は、併用群34人で36イベント、単独群33人で38イベントであった。併用群の重篤な喘息関連イベントのハザード比は1.03(95%信頼区間0.64 to 1.66)で、非劣性を満たした(P=0.003)。喘息に関連した死亡はみられなかった。単独群の2人が喘息に関連した気管挿管を受けた。重度の喘息発作のリスクは単独群よりも併用群で21%低かった(ハザード比0.79; 95%信頼区間 0.70 to 0.89)。少なくとも1回の重度の喘息発作を起こしたのは併用群5834人中480人(8%)、単独群5845人中597人(10%)だった(P<0.001)。

結論:
 サルメテロール+フルチカゾンの吸入を受けている患者では、フルチカゾン単独吸入を受けている患者と比べて重篤な喘息関連イベントの有意なリスク上昇はみられなかった。フルチカゾン+サルメテロールの吸入を受けている患者は、フルチカゾン単独吸入を受けている患者と比べて重度の喘息発作は少なかった。


by otowelt | 2016-03-08 00:04 | 気管支喘息・COPD

近畿中央呼吸器センター 呼吸器内科の 倉原優 と申します。医療従事者の皆様が、患者さんに幸せを還元できるようなブログでありたいと思います。原稿・執筆依頼はメールでお願いします。連絡先:krawelts@yahoo.co.jp


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