何となく研修医に伝えたいこと その12:指導医をバカにしない
2016年 06月 10日

私が研修医の頃から、エビデンス、エビデンスと叫ばれる時代へ突入しました。もともとEBMが重要だと理解されていたのですが、その「E」は日本では「エデビンス」ではなく「エキスパート」の側面が強かったように思います。
最近指導医をするようになって、研修医から「先生、しかし今のエビデンスでは・・・」と指摘されることが多くなりました。私は自分のことをデキる医師だとは思っていないので、研修医から指摘されて「なるほど」と勉強し直すこともありますが、世の中の指導医にはそんな研修医をヨシと思わない人も多いはず。
・指導医がどこまで分かっているか
研修医の時は、誰しもメキメキと臨床力が伸びていきます。しかし、30代、40代と歳を重ねるにつれて、能力がプラトーに達して伸び悩む・・・ということがよくあります。そのため、ヘタすると10年以上前の知見を最新のエビデンスだと思い込んだまま診療している医師もいるかもしれません。
一方、自分なりに頑張って最新の医学的知見をアップデートしている努力家の指導医もいます。しかし、いくらエビデンスが存在しても、日本の実臨床ではなかなかそれが実践できないこともあります。逆に、確たるエビデンスがない医療を行うこともあるかもしれません。これらの理由は、保険適用上の問題であったり、法的な観点であったり、いろいろです。早期からの緩和ケア導入ががん患者さんに利益があると分かっていても、緩和ケアチーム・主治医の質や患者さんの性格によっては、不利益を与えることがあるかもしれません。IPFにステロイドを使うことがよくないと分かっていても、どこか胸部HRCTでステロイド反応性のスリガラス領域があるように直感的に感じて少量導入することもあるでしょう。私も、エビデンスではこうだと分かっているけど、なかば防衛医療のような医療を行うこともあります。
研修医の目は、まだそういった現場の如何ともしがたい苦悩を知らない、青空のように澄んだ瞳です。あなたの目の前に立っている指導医が、勉強することをやめたプラトー指導医なのか、勉強熱心だけど日々悩んでいる指導医なのかは、一目では分かりません。指導医に「先生、それって●●というエビデンスがありますよ」と指摘する前に、一呼吸おいてください。
もしかすると、指導医も「わかっちゃいるけど悩んでいるんだよ」と思っているかもしれません。その一言が、研修医にバカにされていると思われてしまうと、ちょっと研修がやりづらくなってしまうかも・・・。心の広い指導医であれば、どれだけ研修医に指摘されても岩のごとく対応できるのでしょうが。
<何となく研修医に伝えたいこと>
・その1:夕方に指示を出すべからず
・その2:病棟ではあまりタメ口は使うべからず
・その3:患者さんの社会背景や退院後の生活を常に考えるべし
・その4:1日2回は患者さんに会いに行くべし
・その5:ポリファーマシーのクセをつけない
・その6:研修医時代は早めに出勤した方がよい
・その7:クリアカットになりすぎない
・その8:「●●も否定できない」は肯定の理由にはならない
・その9:処方する前に必ず添付文書をチェックするべし
・その10:医学書は衝動買いしない
・その11:他科へのコンサルテーションは目的を明確に
by otowelt
| 2016-06-10 00:09
| コラム:研修医に伝えたいこと