自然気胸に対する術後再発は喫煙者の方が約20倍多い

自然気胸に対する術後再発は喫煙者の方が約20倍多い_e0156318_14441648.jpg 12年におよぶ気胸の前向き研究というのはなかなかお目にかかれないですね。さすがに1415人という登録数は初めて見ました。
 不勉強ですが、Vanderschueren's stageというのを初めて知りました。

Giuseppe Cardillo, et al.
Primary spontaneous pneumothorax: a cohort study of VATS with talc poudrage
Thorax doi:10.1136/thoraxjnl-2015-207976


背景:
 胸腔鏡下手術(VATS)は再発性あるいは遷延性自然気胸の治療として広く普及している。手術は、胸膜全体に対する治療と、ブラの局所的な治療のいずれもを含む。この大規模コホート研究の目的は、VATS後の再発の頻度とそのアウトカムを予測することである。

方法:
 2000年~2012年に自然気胸に対してVATSを行った患者を前向きに登録した。全患者はタルクによる胸腔鏡下散布法(poudrage法)を実施された。標的外科治療は、エアリークの存在およびVanderschueren's stageに基づいて実施された。患者は少なくとも2年間フォローアップされた(中央期間8.5年)。
自然気胸に対する術後再発は喫煙者の方が約20倍多い_e0156318_1071554.jpg
(文献より引用:Vanderschueren's stage)
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(文献より引用:手術治療フローチャート)

結果:
 1415人の自然気胸の患者がVATS+タルクpoudrage法を実施された。手術適応は、再発性気胸92.2%、遷延性エアリーク6.5%だった。合併症は2.0%に起こり、1.7%が術後エアリークであった。死亡例はなかった。入院日数中央値は5日だった。気胸の再発は26人(1.9%)に起こった。外科手術時、592人(43%)が喫煙しており、彼らは非喫煙者よりも有意に再発率が高かった(575人中24人[4.2%] vs 805人中2人[0.2%]、p<0.001)。ブラを縫縮された患者の再発率は、タルクpoudrage法を受けた患者よりも高かった(3.8% vs 0.3%、p=0.036)。
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(文献より引用:喫煙歴による再発率の差)

結論:
 喫煙者と非喫煙者の間には気胸術後の再発に著しい差がみられた。VATS+タルクpoudrage法は再発や合併症が少ないことがわかった。


by otowelt | 2016-07-27 00:38 | 呼吸器その他

近畿中央呼吸器センター 呼吸器内科の 倉原優 と申します。医療従事者の皆様が、患者さんに幸せを還元できるようなブログでありたいと思います。原稿・執筆依頼はメールでお願いします。連絡先:krawelts@yahoo.co.jp


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