※CareNetの連載と同一記事です。
「くしゃみの速度は新幹線よりも速いんだ」と書いてある雑誌を子どもの頃に読んだことがあり、それ以来私はくしゃみとはとてつもない速度で飛び出すという固定観念を抱いていました。しかし、近年の研究によってくしゃみの速度がだいたい分かってきました。どうやら新幹線というのは言い過ぎのようですね。
Nishimura H, et al.
A new methodology for studying dynamics of aerosol particles in sneeze and cough using a digital high-vision, high-speed video system and vector analyses.
PLoS One. 2013 Nov 27;8(11):e80244.
デジタルハイビジョン・ハイスピードビデオシステムを用いてくしゃみの速度を計測した研究です。これはくしゃみに特化した研究ではないのですが、その中からくしゃみに関する部分だけを取り出してみます。
被験者は身長180cmの20代前半の男性で、ティッシュで作ったこよりを使ってくしゃみを誘発しました。速度は、6 m/秒以上の部分はありますが、どうやら10m/秒を超える粒子はなさそうです。最大速度を7m/秒とした場合、時速は25.2kmです。あれ?新幹線どころか、ノロノロ運転の軽トラックに近い数値ですね。この被験者のくしゃみの飛距離は85cmあたりです。
図. くしゃみの飛距離と速度(文献より引用)
Tang JW, et al.
Airflow dynamics of human jets: sneezing and breathing - potential sources of infectious aerosols.
PLoS One. 2013;8(4):e59970.
同じ雑誌のこの論文。今度は被験者6人です(男性4人、女性2人、平均年齢は20代後半)。飛距離は60cm程度と1つ目の論文ほど伸びていません。そのため、速度は最大で4.5m/秒程度、時速に換算すると16.2kmです。成人男性が普通に走ったらこのくらいの速度は出せるんじゃないでしょうか。
図. くしゃみの飛距離と速度2(文献より引用)
時速がとてつもなく速いというのは、Wellらの報告により時速360kmと推定されたためです1)。しかし、これは今から60年以上前の報告であり、水滴Rayleigh formulationのCastleman adaptationに基づいた推定値とされています。
他にもいろいろ文献はありそうですが、くしゃみの速度は、少なくとも新幹線のような高速の乗り物に匹敵するということはなさそうで、せいぜい成人~ウサインボルトが走る程度の速度しかないと考えてよさそうです。
(参考文献)
1) Wells WF. Airborne Contagion and Air Hygiene: an Ecological Study of Droplet Infection. Cambridge, MA: Harvard University Press. 423 p. 1955.
「くしゃみの速度は新幹線よりも速いんだ」と書いてある雑誌を子どもの頃に読んだことがあり、それ以来私はくしゃみとはとてつもない速度で飛び出すという固定観念を抱いていました。しかし、近年の研究によってくしゃみの速度がだいたい分かってきました。どうやら新幹線というのは言い過ぎのようですね。
Nishimura H, et al.
A new methodology for studying dynamics of aerosol particles in sneeze and cough using a digital high-vision, high-speed video system and vector analyses.
PLoS One. 2013 Nov 27;8(11):e80244.
デジタルハイビジョン・ハイスピードビデオシステムを用いてくしゃみの速度を計測した研究です。これはくしゃみに特化した研究ではないのですが、その中からくしゃみに関する部分だけを取り出してみます。
被験者は身長180cmの20代前半の男性で、ティッシュで作ったこよりを使ってくしゃみを誘発しました。速度は、6 m/秒以上の部分はありますが、どうやら10m/秒を超える粒子はなさそうです。最大速度を7m/秒とした場合、時速は25.2kmです。あれ?新幹線どころか、ノロノロ運転の軽トラックに近い数値ですね。この被験者のくしゃみの飛距離は85cmあたりです。

図. くしゃみの飛距離と速度(文献より引用)
Tang JW, et al.
Airflow dynamics of human jets: sneezing and breathing - potential sources of infectious aerosols.
PLoS One. 2013;8(4):e59970.
同じ雑誌のこの論文。今度は被験者6人です(男性4人、女性2人、平均年齢は20代後半)。飛距離は60cm程度と1つ目の論文ほど伸びていません。そのため、速度は最大で4.5m/秒程度、時速に換算すると16.2kmです。成人男性が普通に走ったらこのくらいの速度は出せるんじゃないでしょうか。

時速がとてつもなく速いというのは、Wellらの報告により時速360kmと推定されたためです1)。しかし、これは今から60年以上前の報告であり、水滴Rayleigh formulationのCastleman adaptationに基づいた推定値とされています。
他にもいろいろ文献はありそうですが、くしゃみの速度は、少なくとも新幹線のような高速の乗り物に匹敵するということはなさそうで、せいぜい成人~ウサインボルトが走る程度の速度しかないと考えてよさそうです。
(参考文献)
1) Wells WF. Airborne Contagion and Air Hygiene: an Ecological Study of Droplet Infection. Cambridge, MA: Harvard University Press. 423 p. 1955.