事後解析:IPFに対するスタチンは臨床アウトカムを改善
2016年 10月 31日

IPFの治療がもっと進んでほしいと願っています。私が呼吸器内科で一番進歩を望んでいるのは、IPFです。
Michael Kreuter, et al.
Effect of statins on disease-related outcomes in patients with idiopathic pulmonary fibrosis.
Thorax. 2016 Oct 5. pii: thoraxjnl-2016-208819. doi: 10.1136/thoraxjnl-2016-208819. [Epub ahead of print]
背景:
IPF患者に対するスタチンの効果については議論の余地がある。この事後解析は、スタチンのIPF関連アウトカムに対する効果を調べたものである。
方法:
3つのピルフェニドンの比較試験(CAPACITY 004, 006、ASCEND試験)においてプラセボ群に割り付けられた624人が対象となった。ベースラインのスタチン使用によって層別化をおこなった。アウトカムは1年後の疾患進行、死亡率、入院、死亡あるいは努力性肺活量減少絶対値10%以上の複合アウトカム、死亡あるいは50m以上の6分間歩行距離短縮の複合アウトカムとした。
結果:
ベースラインにおいて276人(44%)がスタチンを使用しており、348人(56%)がスタチンを使用していなかった。スタチン使用者の方が高齢で心血管疾患およびリスク因子の頻度が高かったことを除いて、両群とも患者背景は同等であった。ベースラインの患者背景を補正した多変量解析において、スタチンの使用は死亡あるいは6分間歩行距離減少(ハザード比0.69; 95%信頼区間0.48 to 0.99, p=0.0465)、入院(ハザード比0.58; 95%信頼区間0.35 to 0.94, p=0.0289)、呼吸器関連入院(ハザード比0.44; 95%信頼区間0.25 to 0.80, p=0.0063)、IPF関連死亡率(ハザード比0.36; 95%信頼区間0.14 to 0.95, p=0.0393)を有意に改善した。IPF疾患進行(ハザード比0.75; 95%信頼区間0.52 to 1.07, p=0.1135), 総死亡(ハザード比0.54; 95%信頼区間0.24 to 1.21, p=0.1369)、死亡あるいは努力性肺活量減少(ハザード比0.71; 95%信頼区間0.48 to 1.07, p=0.1032)に対しては有意な効果は観察されなかった。

結論:
この事後解析によれば、スタチンの使用はIPFの臨床アウトカムに利益があるかもしれない。妥当性検証のために前向き臨床試験が必要である。
by otowelt
| 2016-10-31 00:50
| びまん性肺疾患