慢性難治性咳嗽に対するボツリヌス毒素注入療法の有用性

慢性難治性咳嗽に対するボツリヌス毒素注入療法の有用性_e0156318_1584655.jpg 意外な報告ですが、効果は高そうですね。

Sasieta HC, et al.
Bilateral Thyroarytenoid Botulinum Toxin Type A Injection for the Treatment of Refractory Chronic Cough.
JAMA Otolaryngol Head Neck Surg. 2016 Sep 1;142(9):881-8.


背景:
 難治性慢性咳嗽は限られた治療オプションしかない衰弱性の状態である。A型ボツリヌス毒素(BtxA)の甲状披裂筋注入療法は慢性咳嗽患者にもその有効性が報告されている。われわれは、難治性慢性咳嗽患者におけるBtxAの有用性を報告する。

目的:
 慢性咳嗽治療に対する筋電図ガイド下BtxA治療の効果を調べること。

方法:
 単施設(Mayoクリニック)後ろ向き研究において、難治性咳嗽患者で筋電図ガイド下BtxA注入療法を受けた患者22人を2013年7月1日から2014年7月31日まで登録した。
 プライマリアウトカムは自己申告の2ヶ月時での咳嗽重症度または症状の改善が50%以上みられることとした。有害事象についても記録した。

結果:
 22人(年齢中央値61歳、19人が女性)が登録され、31の喉頭BtxA治療が実施された。プライマリアウトカムである自己申告の咳嗽重症度または症状の改善が50%以上みられたのは、31の治療セッションのうち16だった(52%)。11人(50%)の患者は初回のBtxA注入後に50%以上の改善がみられた。主要な有害事象は発生しなかった。処置後水分嚥下障害は治療反応性に対して84%の陽性的中率、100%の陰性的中率を示した。

結論:
 このケースシリーズにおいて、喉頭BtxA注入は難治性慢性咳嗽の患者に忍容性があり、短期間であるものの半数の例に効果があった。BtxA注入後の水分嚥下障害は良好な反応の予測因子である。反応維持期間、患者選択基準、適切なBTxA用量はまだ決まっていない。
by otowelt | 2016-11-07 00:46 | 呼吸器その他

近畿中央呼吸器センター 呼吸器内科の 倉原優 と申します。医療従事者の皆様が、患者さんに幸せを還元できるようなブログでありたいと思います。原稿・執筆依頼はメールでお願いします。連絡先:krawelts@yahoo.co.jp


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