治療抵抗性NTM症に対するアミカシン吸入の追加は喀痰陰性化と6分間歩行距離を改善

治療抵抗性NTM症に対するアミカシン吸入の追加は喀痰陰性化と6分間歩行距離を改善_e0156318_13334416.jpg 日本ではなかなか実施できないプラクティスです。

Kenneth N Olivier, et al.
Randomized Trial of Liposomal Amikacin for Inhalation in Nontuberculous Mycobacterial Lung Disease
Am J Respir Crit Care Med. First published online 17 Oct 2016 as DOI: 10.1164/rccm.201604-0700OC


背景:
 多剤併用期間の長さやその効果の乏しさから非結核性抗酸菌症(NTM症)のマネジメントには限界がある。

目的:
 この第2相試験では、治療抵抗性NTM症(MACおよびM. abscessus)に対するアミカシン吸入リポソーム製剤(LAI)の効果と安全性を調べた。

方法:
 二重盲検相において、患者はランダムに1日1回のLAI(590mg)あるいはプラセボに84日間割り付けられた。多剤併用療法は継続されたままとした。両群とも追加で84日間オープンラベルのLAIを受けることが可能とされた。プリイマリエンドポイントは、ベースラインから84日までの判定量抗酸菌発育スケールの変化とした。他のエンドポイントとして、喀痰陰性化、6分間歩行距離、有害事象を設定した。

結果:
 修正ITT集団で89人(LAI:44人、プラセボ:45人)が登録された。平均年齢は59歳で、88%が女性、92%が白人だった。80人が二重盲検相、59人がオープンラベル相を完遂した。プライマリエンドポイントは統計学的に有意な結果は示せなかった(P=0.072)。しかしながら、LAI群では1回以上の喀痰培養陰性が有意に多かった(32% [14/44] vs. 9% [4/45]; P=0.006)。またLAI群で84日時点での6分間歩行距離が改善した(+20.6m vs. −25.0m; P=0.017)。治療効果は嚢胞性線維症のMAC患者でより顕著であった。またLAI後も1年その効果を維持できた。ほとんどの有害事象は呼吸器系のもので、何人かは薬剤中断を余儀なくされた。
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(文献より引用:喀痰培養陰性化と6分間歩行距離)

結論: 
 治療抵抗性NTM症に対して多剤併用療法にLAIを追加することで、喀痰陰性化および6分間歩行距離の改善がみられた。
by otowelt | 2016-11-10 00:27 | 抗酸菌感染症

近畿中央呼吸器センター 呼吸器内科の 倉原優 と申します。医療従事者の皆様が、患者さんに幸せを還元できるようなブログでありたいと思います。原稿・執筆依頼はメールでお願いします。連絡先:krawelts@yahoo.co.jp


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