肺動脈性肺高血圧症と肥満の関連

肺動脈性肺高血圧症と肥満の関連_e0156318_9102283.jpg 少なくとも、肥満パラドクスの現象はありませんでした。

Jason Weatherald, et al.
The association between body mass index and obesity with survival in pulmonary arterial hypertension
CHEST, DOI: https://doi.org/10.1016/j.chest.2018.05.006


背景:
 肥満パラドクス、すなわち肥満が死亡率を低下させる現象は、いろいろな心肺疾患で記述されてきた。それは肺動脈性肺高血圧症(PAH)とて例外ではない。われわれの目的は、肥満とBMIが、PAH患者の死亡率に関連しているかどうか調べることである。

方法:
 特発性、薬剤性、遺伝性のPAH患者をフランスPAHレジストリーから登録した。Cox回帰およびKaplan-Meier解析を用いて、BMI・死亡と総死亡率の関連を調べた。

結果:
 1255人の患者が登録され、30%が肥満だった。肥満は女性の方に多く(65.1% vs 53.4%、p<0.01)、薬剤性PAHに多く(28.9% vs 9.2%、p<0.01)、全身性の高血圧症、糖尿病、甲状腺機能低下症も肥満群に多くみられた。肥満患者はNYHA IIIの状態になりやすく(66.4% vs 57.1%)、IVの頻度は低かった(11.8% vs 16.9%、p<0.01)。6分間歩行距離は肥満患者のほうが少なかった(276±121m vs 324±146m, p<0.01)。肥満患者のほうが、右室圧や肺動脈楔入圧は高かったが、肺血管抵抗は低かった。多変量解析において、BMI(ハザード比0.99, 95%信頼区間0.97-1.01, p=0.41)も肥満(ハザード比1.0, 95%信頼区間0.99-1.01, p=0.46)も、死亡率とは関連がなかった。65歳未満の肥満PAH患者では、死亡に関して年齢と肥満の有意な交互作用がみられた(ハザード比3.01, 95%信頼区間1.56-5.79, p=0.001)。
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(文献より引用)

結論:
全体的に、PAHにおいて肥満は死亡率と関連していなかった。ただ、若年層では交互作用が観察された。すなわち、肺移植待機になるような若年層では体重マネジメントが重要であるということが言える。




by otowelt | 2018-06-12 00:27 | 呼吸器その他

近畿中央呼吸器センター 呼吸器内科の 倉原優 と申します。医療従事者の皆様が、患者さんに幸せを還元できるようなブログでありたいと思います。原稿・執筆依頼はメールでお願いします。連絡先:krawelts@yahoo.co.jp


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