血清KL-6の推移は間質性肺疾患の疾患進行と関連

血清KL-6の推移は間質性肺疾患の疾患進行と関連_e0156318_9151917.jpg こういうシンプルな研究って意外に少ないですよね。

Jiang Y, et al.
Sequential changes of serum KL-6 predict the progression of interstitial lung disease.
J Thorac Dis. 2018 Aug;10(8):4705-4714.


背景:
 間質性肺疾患(ILD)はさまざまな臨床経過や予後不良の転帰をたどる緩徐に進行する致死的線維性肺疾患である。臨床医および患者は、至極効率的で精度の高いILDの予測因子があれば、利益が得られるはずである。この研究の目的は、血液バイオマーカーがILD進行を予測することができるかどうか評価することであった。

方法:
 この研究には、Guangzhou Institute of Respiratory HealthにおいてILDがあると診断された85人の患者が参加した。その中には特発性肺線維症(IPF)患者が20人含まれていた。平均追跡期間は12ヶ月であり、全患者はこの施設に4回あるいは5回受診して検査された。ベースライン、1ヶ月後、2ヶ月後、6ヶ月後、12ヶ月後の血清検体が採取され、KL-6濃度が調べられた。ILDの進行を反映しているかどうかみるため、ロジスティック回帰モデルを用いてこのバイオマーカー濃度の動的変動が検証された。

結果:
 ILD患者におけるベースラインのKL-6は、健常コントロールよりも有意に上昇していた。血清KL-6レベルは、疾患進行がみられた患者で有意に上昇していた(1,985.2±1,497.8 vs. 1,387.6±1,313.1 µg/mL; P<0.001)。ロジスティック回帰において、KL-6の連続的変化は、次回の追跡時のILD進行の有意な予測因子であった(オッズ比2.569; 95%信頼区間2.260-2.880; P=0.001)。また、KL-6の連続的変化はIPF患者においても疾患進行の有意な予測因子であった(オッズ比3.611; 95%信頼区間1.048-12.442; P<0.01)。ベースラインの濃度は、ILDやIPFの予測因子とはならなかった。単変量Cox分析では、他の因子に加えてKL-6は有意に生存とも関連していた(相対リスク1.901; 95%信頼区間1.294-2.793; P<0.001)。

結論:
 重度の呼吸機能障害がない場合と比べると、重度の呼吸機能障害があるILD患者の血清KL-6は上昇していた。予後不良および死亡にいたる頻度は、バイオマーカーの濃度上昇と関連していた。バイオマーカーの連続的測定は、臨床マネジメントにおいて疾患モニタリングや評価に価値があるかもしれない。





by otowelt | 2018-10-12 00:12 | びまん性肺疾患

近畿中央呼吸器センター 呼吸器内科の 倉原優 と申します。医療従事者の皆様が、患者さんに幸せを還元できるようなブログでありたいと思います。原稿・執筆依頼はメールでお願いします。連絡先:krawelts@yahoo.co.jp


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