日本人のCOPD患者に対する吸入ステロイドは肺炎を増加させないかもしれない

日本人のCOPD患者に対する吸入ステロイドは肺炎を増加させないかもしれない_e0156318_135223100.jpg GOLDガイドラインはICSを二の次に使うような方向性に改訂されたばかりですが、後ろ向きではあるものの興味深いエビデンスです。

Hirano R, et al.
Inhaled corticosteroids might not increase the risk of pneumonia in patients with chronic obstructive pulmonary disease in Japan.
Int J Chron Obstruct Pulmon Dis. 2018 Oct 23;13:3503-3509.


背景:
 COPD患者に対する吸入ステロイド(ICS)の使用はCOPD増悪の頻度を低くする。近年、COPD患者におけるICSの合併症として肺炎が報告された。しかしながら、日本でのICSと肺炎の関連に関する報告は少ない。さらに、ICSのタイプにおける情報はほとんどない。

患者および方法:
 これらを明らかにするため、われわれは日本人COPD患者における肺炎の発症について調べた。われわれは、自施設で2009年1月から2013年8月までのCOPD患者における肺炎発症を後ろ向きに調べた。罹患と死亡、ICS使用、年齢、性別、COPD分類が調べられた。ICS投与を受けたCOPD患者グループと、ICS投与を受けていないCOPD患者グループがそれぞれ比較された。

結果:
 COPD患者639人(7.98%)のうち51人の患者が肺炎を発症した。ICS治療を受けたCOPD患者252人のうち13人(5.16%)が肺炎を発症し、ICS治療を受けていないCOPD患者387人のうち38人(9.82%)が肺炎を発症した。ICS治療を受けたCOPD患者の死亡率は7.7%であり、ICS治療を受けていないCOPD患者の死亡率は10.5%だった(p=0.767)。フルチカゾン/サルメテロール使用は、ブデソニド/ホルモテロール使用よりも肺炎のリスクが高い傾向にあった。ICS使用は、日本人COPD患者において肺炎リスクや肺炎による死亡リスクを上昇させなかった。
日本人のCOPD患者に対する吸入ステロイドは肺炎を増加させないかもしれない_e0156318_801597.png
(文献より引用:肺炎の発症)

結論:
 日本人COPD患者に対するICSは肺炎リスクを上昇させないかもしれない。肺炎に関しては、日本人COPD患者へのICSは安全使用できる可能性がある。人種によって肺疾患の差があることから、それぞれの国で適切な治療を適用すべきである。




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by otowelt | 2018-12-25 00:00 | 気管支喘息・COPD

近畿中央呼吸器センター 呼吸器内科の 倉原優 と申します。医療従事者の皆様が、患者さんに幸せを還元できるようなブログでありたいと思います。原稿・執筆依頼はメールでお願いします。連絡先:krawelts@yahoo.co.jp


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