
Izumi K, et al.
Epidemiology of Adults and Children Treated for Nontuberculous Mycobacterial Pulmonary Disease in Japan.
Ann Am Thorac Soc. 2018 Oct 19. doi: 10.1513/AnnalsATS.201806-366OC.
背景:
肺非結核性抗酸菌症(NTM-PD)の疫学的ステータスは、日本を含む主要国でもまだ不透明である。
目的:
日本国内における発症と罹患を算出し、患者特性や地理的差異を記述すること。
方法:
この横断研究において、われわれは2009年から2014年までの日本国内データベースからNTM-PDに対するレセプトデータを抽出し解析した。NTM-PD患者は、少なくとも1回NTM-PDに関連したICD-10コード対象と抗菌薬併用処方のレセプトにより同定した。われわれは、2011年のNTM-PDの発症数と罹患数を、性別、年齢グループ、地理地域、合併症評価に応じて算出した。
結果:
2011年のNTM-PDの発症と罹患はそれぞれ11,304人(10万人年あたり8.6人、95%信頼区間8.5-8.8人)、37,063人(10万人年あたり29.0人、95%信頼区間28.7-29.3人)だった。発症例の平均年齢は69.3±12.3歳で、69.6%が女性だった。50歳を超える年齢層では男女ともに発症率が急峻に増加し、80歳を超える年齢層を除くと全年齢層で女性優位だった。男性患者は高齢での発症率が高いという特徴があり、年齢とともに合併症も急激に増えた。もっともよくみられた合併症は女性では気管支拡張症で、男性ではCOPDだった。日本の最南の島である沖縄を除いて、南西地域のほとんどで高い発症率が観察された。
結論:
本研究では、治療歴に基づいてNTM-PD症例を保守的に定義しているにもかかわらず、世界的に高い発症率と罹患率を有することが明らかになった。合併症を伴う長期罹病により、高い罹患率となったのだろう。高齢者と女性で特に高いNTM-PDリスクがみられたが、合併症のある高齢男性ではより注意が必要である。地理的差異をもたらす因子を調べるため、さらなる研究が必要である。