さらば、難しいPubMedよ! その1

・はじめに
 研修医や若手医師から、「PubMedの使い方が分からない」「どうやって英語論文を探せばよいのかわからない」と相談を受けることがあります。ここでは最大のシェアを誇るPubMedの簡単な使い方を紹介したいと思います。
 
 若手医師にとってPubMedが分かりにくいのは、指導医が難しいアドバンスな検索方法ばかり教えるからです。PubMedをそんな難しく考えないでください。テレビを見るときに、音質や画面の設定を細かく調整しますか?アンテナレベルがどのくらいあるか確認しますか?テレビが好きな人はそうすればよろしい。しかし、視聴さえできればよいと思っているなら、テレビの電源をオンするだけでよいのです。PubMedも同じなんです。電源のつけ方を知りたい人間に、テレビの仕組みを教えるのはナンセンスです。


1.PubMedを使う目的を明確にする
 私は毎日PubMedを見ます。この理由は、呼吸器内科領域のエビデンスを取りこぼしたくないからです。世界中の呼吸器内科医が知っているであろう第3相試験の概要を自分が知らない、ということに耐えられないのです。そのため、私は「ある程度の質が高い論文を定期的にスクリーニングする」という目的でPubMedを使っています。しかし、若手医師の中には「抄読会で発表するホットで面白い論文を調べる」という目的でPubMedを開く人もいるでしょう。

 実はこの2つ、まったくPubMedの使い方が異なるのです。どちらがカンタンかと問われれば、定期的スクリーニングです。そしてどちらが有益かと問われれば、やはり定期的スクリーニングなのです。

 抄読会で発表するネタを仕込むのは、月1回くらいの頻度でよいかもしれません。しかし、抄読会が終わればPubMedのことなんて忘れてしまう。さて、みなさんはそれでよいでしょうか?ゲリラ的に検索する技術だけ身につける意味なんてあるでしょうか?

※論文を書く際、身に付ける意味は大いにあります。それはまた別の話。

 あなたの医師人生において、興味ある分野の知見を継続的に積み上げていくには、定期的にスクリーニングする仕組みを構築するべきです。私が好きな言葉に「怠惰を求めて勤勉に行き着く」というものがあります。博奕打ちがイカサマを必死に練習している様子を見て、「楽して大金を稼ごうという人種なのに、やけに勤勉ね」と女性に呆れられるシーンで登場する言葉です。麻雀と医学を結びつけるのは不適切かもしれませんが、将来の仕事量の軽減に期待して先行投資するというのは私にとって優先度が高いことです。

 私は、慢性咳嗽の患者さんが来ても、いちいち問診項目を思い出したり調べたりすることはありません。電子カルテの自分のテンプレートに慢性咳嗽の問診票や鑑別すべき疾患を登録しているからです。同様に、いくつかの疾患の診断基準に関するスコアリングもテンンプテートとして登録しています。これは、患者さんが来院したとき、調べものや入力で時間を取られたくないからです。「事前に苦労を買って、将来の時間を買う」ということです。

 こういう行動を起こす条件は、現在苦労する時間よりも将来返ってくる時間リターンのほうが大きい場合です。前苦労の方が大きくて節約できる時間が少なければ、時間を先行投資する意味がありません。

 私がPubMedで定期的スクリーニングの仕組みを作る理由は、医師人生における論文検索の時間を節約するためです。海外のドクターの多くは、後述するMy NCBIを利用していますが、日本人のほとんどの医師はまだNCBIのアカウントを作っていないそうです(内部の人間に聞きました)。


2.My NCBIを使うだけでよい
 みなさんがPubMedを週1回・月1回でも定期的にチェックしたいと思うならば、「My NCBI」を愛用しましょう。メールアドレスとパスワードだけ登録すれば、何度もスクリーニングのために検索ボックスにワードを入力する作業から解放されます。

 PubMedの右上に「Sign into NCBI」というボタンがあるのでクリックしてみましょう。まだNCBIアカウントを作成していないのなら、「Register for an NCBI account」というところからメールアドレス・パスワードを設定してアカウントを作ってください。

 アカウントを作成すると、ログインしているときにマイアカウントが右上に表示されるようになります。以後、PubMedを使うときは、「My NCBI」を使うよう心がけて下さい。
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 さて、私のMy NCBIを見てみましょう。基本的に常に最新の呼吸器系論文をテーマ別に検索できるようになっています。「COPD」「喘息」というタイトルは私がつけたものですが、これは一定の条件で保存したスクリーニング検索式に関して、論文の更新があったものを「What's new」に数字で表示してくれる仕組みです。この数字をクリックすると、更新があった論文だけをチェックすることができます。
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 たとえば、私が保存している「COPD」というのは、「COPDに関して信頼性が高い医学雑誌のうち、アブストラクト情報が掲載されているCOPDの文献」という条件です。COPDの新しい論文がChestやERJで掲載されれば、通知がくるようになっているのです。

 これってすごくラクじゃないですか?日々更新されていく膨大な文献の中からCOPDの論文を探さなくても、ちゃんとMy NCBIに通知が来るんですから。指定のメールアドレスに通知を送るよう設定しておけば、メールで「新しい論文があるよ!」と教えてくれます。

 事前に少し時間をかけて準備するだけで、少なくともあなたが医師を続けている間、ホットな情報が届くのです。これはかなり効率的な時間投資だと思うので、特に若手医師のみなさんは普段からMy NCBIを使うクセをつけてください。

 さて、次回は具体的にどういう「検索式」をMy NCBIに保存しているか紹介したいと思います。




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by otowelt | 2019-02-09 00:47 | レクチャー

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