さらば、難しいPubMedよ! その2
2019年 02月 10日
3.検索式を登録する
前回の続きです。My NCBIに「検索式」を登録しなければ定期的スクリーニングの仕組みを構築できないのですが、そもそも「検索式」って何よってハナシです。たとえば、PubMedの検索欄に「COPD」と入力してください。おそらく8万件くらいの文献がヒットするはずです。これは、「COPD」というワードが、タイトルやアブストラクトなどに含まれている全文献をヒットさせているからです。では次に、「COPD asthma」と入力してみてください。グっとヒット件数が減ったはずです。これは、COPDとasthmaの両方の情報を含んでいる文献を検索しているからです。
さて、PubMed検索結果の画面で右下のほうを見てください。なんかよくわからん英語がズラっと書かれているテーブルがありますね。この[ ]でくくられた部分がPubMedの「タグ」なのですが、こんなもん全部覚えなくてよい。

ちなみにこの検索式は「("pulmonary disease, chronic obstructive"[MeSH Terms] OR ("pulmonary"[All Fields] AND "disease"[All Fields] AND "chronic"[All Fields] AND "obstructive"[All Fields]) OR "chronic obstructive pulmonary disease"[All Fields] OR "copd"[All Fields]) AND ("asthma"[MeSH Terms] OR "asthma"[All Fields])」です。なんのこっちゃ分かりませんよね。落語の『寿限無』みたいな。(笑)
自分なりの検索式をイチから作るのが面倒ならば、少しパクればよいのです。病院でだれか必ず一人、こういうのをやっている人間がいますし、何ならこの記事からまずはパクればよい。というわけで、私の検索式の一部を紹介したいと思います。
では、PubMedの検索欄のところに、上記「呼吸器全般」の検索式をコピーしてそのまま検索してみてください。私が呼吸器領域で普段から読んでいる論文が時系列で上から表示されます。この検索式はどういうことを書いてあるかというと、「ERJ、CHEST、Thorax、Lancet Respiratory Medicine、AJRCCM、Respirology、Respiration、Respiratory Medicineの医学雑誌に掲載された、アブストラクトがある論文すべて」という条件です。[jo]というのはジャーナルの名前という意味のタグです。雑誌名は、「(Lancet Respiratory Medicine[jo]) 」でも「(Lancet Respir Med[jo])」の短縮形でも検索できます。「AND hasabstract」というのは、アブストラクトが閲覧できる文献を必要条件に組み入れているのです。レターや症例報告のようにアブストラクトがない文献を、ハナっから除外したいからです※。この検索式の欠点は、たとえばNew England Journal of Medicineに掲載された呼吸器系の原著論文がひっかからないことです。当然です。[jo]にその医学雑誌を組み入れていないのですから。
※最近CHEST誌は、症例報告にアブストラクトをつけてくるようになったので、厳密に原著論文だけを検索したいなら別の検索式を構築する必要があります。
次にこのパクった検索式をそのままあなたのMy NCBIに登録してみましょう。「Create alert」をクリックしてください。
「Name of saved search」を好きな名前(私は「呼吸器全般」)にして、リマインドメールを送ってもらうかどうか設定して登録します。
こういう検索式をいくつも登録することで、My NCBIに自分だけの「検索式倉庫」が出来上がります。検索式をどのように工夫して登録するかはある程度慣れが必要ですが、まずはこういう仕組みがあることを知って、利用してみてください。
次回は、検索式についてもう少し詳しく書いてみましょう。ただ、あまりアドバンスな内容にすると逆に使いにくくなってしまいますから、若手医師がおさえておくべき基本だけをお伝えしたいと思います。

by 倉原優
前回の続きです。My NCBIに「検索式」を登録しなければ定期的スクリーニングの仕組みを構築できないのですが、そもそも「検索式」って何よってハナシです。たとえば、PubMedの検索欄に「COPD」と入力してください。おそらく8万件くらいの文献がヒットするはずです。これは、「COPD」というワードが、タイトルやアブストラクトなどに含まれている全文献をヒットさせているからです。では次に、「COPD asthma」と入力してみてください。グっとヒット件数が減ったはずです。これは、COPDとasthmaの両方の情報を含んでいる文献を検索しているからです。
さて、PubMed検索結果の画面で右下のほうを見てください。なんかよくわからん英語がズラっと書かれているテーブルがありますね。この[ ]でくくられた部分がPubMedの「タグ」なのですが、こんなもん全部覚えなくてよい。

ちなみにこの検索式は「("pulmonary disease, chronic obstructive"[MeSH Terms] OR ("pulmonary"[All Fields] AND "disease"[All Fields] AND "chronic"[All Fields] AND "obstructive"[All Fields]) OR "chronic obstructive pulmonary disease"[All Fields] OR "copd"[All Fields]) AND ("asthma"[MeSH Terms] OR "asthma"[All Fields])」です。なんのこっちゃ分かりませんよね。落語の『寿限無』みたいな。(笑)
自分なりの検索式をイチから作るのが面倒ならば、少しパクればよいのです。病院でだれか必ず一人、こういうのをやっている人間がいますし、何ならこの記事からまずはパクればよい。というわけで、私の検索式の一部を紹介したいと思います。
■呼吸器全般 ((Eur Respir J[jo]) OR (Chest[jo]) OR (Thorax[jo]) OR (Lancet Respir Med[jo]) OR (Am J Respir Crit Care Med[jo]) OR (Respirology[jo]) OR (Respiration[jo]) OR (“Respiratory Medicine”[jo])) AND hasabstract ■COPD COPD AND ((Int J Chron Obstruct Pulmon Dis[jo]) OR (Eur Respir J[jo]) OR (Chest[jo]) OR (Respirology[jo]) OR (Respiration[jo]) OR ("Respiratory Medicine"[jo]) OR (Thorax[jo]) OR (Lancet Respir Med[jo]) OR (Int J Tuberc Lung Dis[jo]) OR (Am J Respir Crit Care Med[jo]) OR (N Engl J Med[jo]) OR ("Lancet"[jo]) OR (BMJ[jo]) OR (JAMA[jo]) OR (Ann Intern Med[jo]) OR (JAMA Intern Med[jo]) OR (CMAJ[jo])) AND hasabstract |
では、PubMedの検索欄のところに、上記「呼吸器全般」の検索式をコピーしてそのまま検索してみてください。私が呼吸器領域で普段から読んでいる論文が時系列で上から表示されます。この検索式はどういうことを書いてあるかというと、「ERJ、CHEST、Thorax、Lancet Respiratory Medicine、AJRCCM、Respirology、Respiration、Respiratory Medicineの医学雑誌に掲載された、アブストラクトがある論文すべて」という条件です。[jo]というのはジャーナルの名前という意味のタグです。雑誌名は、「(Lancet Respiratory Medicine[jo]) 」でも「(Lancet Respir Med[jo])」の短縮形でも検索できます。「AND hasabstract」というのは、アブストラクトが閲覧できる文献を必要条件に組み入れているのです。レターや症例報告のようにアブストラクトがない文献を、ハナっから除外したいからです※。この検索式の欠点は、たとえばNew England Journal of Medicineに掲載された呼吸器系の原著論文がひっかからないことです。当然です。[jo]にその医学雑誌を組み入れていないのですから。
※最近CHEST誌は、症例報告にアブストラクトをつけてくるようになったので、厳密に原著論文だけを検索したいなら別の検索式を構築する必要があります。
次にこのパクった検索式をそのままあなたのMy NCBIに登録してみましょう。「Create alert」をクリックしてください。

「Name of saved search」を好きな名前(私は「呼吸器全般」)にして、リマインドメールを送ってもらうかどうか設定して登録します。

こういう検索式をいくつも登録することで、My NCBIに自分だけの「検索式倉庫」が出来上がります。検索式をどのように工夫して登録するかはある程度慣れが必要ですが、まずはこういう仕組みがあることを知って、利用してみてください。
次回は、検索式についてもう少し詳しく書いてみましょう。ただ、あまりアドバンスな内容にすると逆に使いにくくなってしまいますから、若手医師がおさえておくべき基本だけをお伝えしたいと思います。
by otowelt
| 2019-02-10 00:49
| レクチャー

近畿中央呼吸器センター 呼吸器内科の 倉原優 と申します。医療従事者の皆様が、患者さんに幸せを還元できるようなブログでありたいと思います。原稿・執筆依頼はメールでお願いします。連絡先:krawelts@yahoo.co.jp
by 倉原優
ファン申請 |
||