悪性胸膜中皮腫と診断されたあと早期緩和ケア介入を紹介する意義は乏しい

悪性胸膜中皮腫と診断されたあと早期緩和ケア介入を紹介する意義は乏しい_e0156318_10535567.png 意外な結果でした。

Brims F, et al.
Early specialist palliative care on quality of life for malignant pleural mesothelioma: a randomised controlled trial.
Thorax. 2019 Jan 19. pii: thoraxjnl-2018-212380. doi: 10.1136/thoraxjnl-2018-212380.


目的:
 悪性胸膜中皮腫(MPM)は症状がひどく生存率が低い。他の癌種のエビデンスによれば、早期の専門家による緩和ケア(SPC)はオンコロジーサービスと組み合わせることで健康関連QOL(HRQoL)にいくらか利益があるとされているが、確たるエビデンスが不足している。

方法:
 われわれは多施設共同ランダム化並行群間試験において、早期SPC紹介と通常ケアをイギリス19施設および西オーストリアの大規模1施設で比較した。MPMと新規に診断された参加者と、その後主な介護者が追加で登録された。

介入:
 割り付けの3週間以内にSPCのレビューを受け、試験期間中4週ごとに受診した。HRQoLはベースラインおよび4週ごとにヨーロッパ癌研究機関(EORTC)QOL質問票コア30(C30)を用いて評価された。

プライマリアウトカム:
 ランダム化から12週時点でのEORTC C30のGlobal health status変化。

結果:
 2014年4月から2016年10月まで、174人の参加者がランダム化された。観察期間中央値は41.1週だった。12週時点でのHRQoLスコアには両群の有意差はなかった(平均差1.8、95%信頼区間―4.9~8.5、p=0.59)。24週時点でのHRQoLも群間差はなかった(平均差-2.0、95%信頼区間-8.6~4.6、p=0.54)。12週あるいは24週時点での抑うつ/不安スコアにも差はなかった。介護者においても、12週あるいは24週時点でのHRQoLあるいは気分には差はみられなかったが、介入群を支持するようなケアに対する一貫した好みはあった。
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結論:
 必要に応じてSPCへのアクセスが良好な施設に通院しているMPM患者において、診断がつけられてからすぐにルーチンにSPCを紹介する意義はない。



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by otowelt | 2019-03-07 00:38 | 肺癌・その他腫瘍

近畿中央呼吸器センター 呼吸器内科の 倉原優 と申します。医療従事者の皆様が、患者さんに幸せを還元できるようなブログでありたいと思います。原稿・執筆依頼はメールでお願いします。連絡先:krawelts@yahoo.co.jp


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