気管支鏡による気胸は、左上葉に多い

気管支鏡による気胸は、左上葉に多い_e0156318_9511053.jpg これは貴重な報告ですね。なるほど、左上葉には注意です。

Herout V, et al.
Transbronchial biopsy from the upper pulmonary lobes is associated with increased risk of pneumothorax - a retrospective study.
BMC Pulm Med. 2019 Mar 1;19(1):56.


背景:
 気胸(PTX)は、経気管支生検(TBB)でもっともよくみられる合併症の1つである。過去の研究では、上葉のTBBはPTX発症リスク上昇と関連しているかもしれないとされている。この研究の目的は、異なる肺葉でのTBB後のPTXリスクを比較することである。

方法:
 2015年1月1日から2017年12月31日までの全気管支鏡記録(チェコ共和国、ブルノ大学病院、呼吸器部門)が後ろ向きに解析された。3542の気管支鏡記録のうち、796人がTBBをおこなわれており、さらなる解析をこころみた。基礎の患者背景記録、TBB処置関連因子、喫煙歴、放射線学的特性が解析された。さらに、PTXを発症した患者、PTX発症時期、PTXの症状、異常陰影の分布、入院期間についても解析された。

結果:
 PTXを発症した患者は有意にBMIが低く、4検体を超える検体採取をおこなっていた(いずれもp < 0.05)。左上葉からTBBをおこなうと、有意にPTX発症リスクが上昇した(オッズ比2.27; 95%信頼区間1.18-4.35; p = 0.02)。反して、右下葉からTBBをおこなうと、PTX発症リスクは有意に低かった(オッズ比0.47; 95%信頼区間0.22-0.98; p = 0.04)。ロジスティック回帰分析では、BMI(オッズ比1.08; 95%信頼区間1.02-1.16; p = 0.01)、左上葉からの検体採取(オッズ比2.15; 95%信頼区間1.13-4.11; p = 0.02)、4検体を超える採取(オッズ比1.91; 95%信頼区間1.04-3.49; p = 0.04)がPTX発症に有意に関連していた。

結論:
 左上葉からのTBBは処置後の気胸リスク上昇と有意に関連していた。右下葉はもっとも安全にTBBができると思われる。びまん性に陰影がある患者では、処置後PTXリスクを減らすためにTBBは右下葉からおこなうべきであろう。



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by otowelt | 2019-03-26 00:54 | 気管支鏡

近畿中央呼吸器センター 呼吸器内科の 倉原優 と申します。医療従事者の皆様が、患者さんに幸せを還元できるようなブログでありたいと思います。原稿・執筆依頼はメールでお願いします。連絡先:krawelts@yahoo.co.jp


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