クライオバイオプシーと外科的肺生検の病理医による一致率は不良

クライオバイオプシーと外科的肺生検の病理医による一致率は不良_e0156318_1543237.jpg さて、クライオバイオプシーに対して一石を投じる論文が出てきました。
 「中」と「外」から採取するので、厳密に同じ場所をとっているわけではないのですが、さりとて外科的肺生検のほうが検体量が大きいため、信頼性もそちらのほうが高くなります。
 オルタナティブとして用いることができるかどうか、議論はまだまだ続く。

Romagnoli M, et al.
Poor Concordance between Sequential Transbronchial Lung Cryobiopsy and Surgical Lung Biopsy in the Diagnosis of Diffuse Interstitial Lung Diseases.
Am J Respir Crit Care Med. 2019 Mar 13. doi: 10.1164/rccm.201810-1947OC.


背景:
 経気管支肺クライオバイオプシー(TBLC)と、組織検体を要する現在の間質性肺疾患(ILD)ゴールドスタンダードである外科的肺生検(SLB)の間の診断不一致についてはいまだ議論の余地がある。

目的:
 同一患者で連続して実施されたTBLCとSLBの間の診断不一致、両処置の診断精度、多面的アセスメント(MDA)決定の変化について調べること。

方法:
 初回MDAで非definite UIPパターン(胸部HRCT写真における)と診断されたILD患者の、2施設における前向き研究である。TBLCを行われた患者が、すみやかにビデオ補助胸腔鏡によるSLBを同一の解剖学的部位で実施された。施設の病理医による両検体の公開検鏡および2回目のMDA(MDA2)で最終診断された後、匿名化されたTBLCおよびSLBスライドが外部専門家病理医(TVC)によって盲目的に評価された。κ一致係数および%一致率が、TBLC vs SLB、MDA2 vs TBLC、MDA2 vs SLBにおいて盲検化された病理医と施設病理医で比較検討された。

結果:
 21人の患者が登録された。TBLCの検体サイズ中央値(長径)は7mm(IQR 5-8mm)だった。SLB検体サイズは平均46.1±13.8mmだった。一致係数および%一致率は、TBLC vs SLB:κ=0.22(95%信頼区間0.01-0.44), %一致率38%(95%信頼区間18-62)、MDA2 vs TBLC:κ=0.31(95%信頼区間0.06-0.56), %一致率48%(95%信頼区間26-70)、MDA2 vs SLB:κ=0.51(95%信頼区間0.27-0.75), %一致率62%(95%信頼区間38-82)だった。2例の気胸(9.5%)がTBLCで発症した。もし21人中11人(52%)の症例でSLBが実施されなかった場合、TBLCは異なる治療をもたらしたと考えられる。

TBLCSLB
患者1OP亜急性HP
患者2UIPCHP
患者3UIPUIP
患者4診断できずPLCH
患者5UIPUIP
患者6UIPCHP
患者7UIPNSIP
患者8RB-ILDRB-ILD
患者9診断できずUIP
患者10PLCHUIP
患者11NSIPNSIP
患者12UIPUIP
患者13診断できずALI
患者14NSIPlymphoid process
患者15UIPNSIP
患者16診断できずUIP
患者17UIPUIP
患者18NSIPNSIP
患者19UIPUIP
患者20RB-ILDNSIP
患者21慢性リンパ性白血病DIP


結論:
 ILDのアセスメントにおいてTBLCとSLBの病理学的な検討の一致率は不良であった。SLBはMDAで支持された最終診断とより一致していた。






by otowelt | 2019-04-04 00:35 | びまん性肺疾患

近畿中央呼吸器センター 呼吸器内科の 倉原優 と申します。医療従事者の皆様が、患者さんに幸せを還元できるようなブログでありたいと思います。原稿・執筆依頼はメールでお願いします。連絡先:krawelts@yahoo.co.jp


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