クライオバイオプシーと外科的肺生検の病理医による一致率は不良
2019年 04月 04日
さて、クライオバイオプシーに対して一石を投じる論文が出てきました。
「中」と「外」から採取するので、厳密に同じ場所をとっているわけではないのですが、さりとて外科的肺生検のほうが検体量が大きいため、信頼性もそちらのほうが高くなります。
オルタナティブとして用いることができるかどうか、議論はまだまだ続く。
Romagnoli M, et al.
Poor Concordance between Sequential Transbronchial Lung Cryobiopsy and Surgical Lung Biopsy in the Diagnosis of Diffuse Interstitial Lung Diseases.
Am J Respir Crit Care Med. 2019 Mar 13. doi: 10.1164/rccm.201810-1947OC.
背景:
経気管支肺クライオバイオプシー(TBLC)と、組織検体を要する現在の間質性肺疾患(ILD)ゴールドスタンダードである外科的肺生検(SLB)の間の診断不一致についてはいまだ議論の余地がある。
目的:
同一患者で連続して実施されたTBLCとSLBの間の診断不一致、両処置の診断精度、多面的アセスメント(MDA)決定の変化について調べること。
方法:
初回MDAで非definite UIPパターン(胸部HRCT写真における)と診断されたILD患者の、2施設における前向き研究である。TBLCを行われた患者が、すみやかにビデオ補助胸腔鏡によるSLBを同一の解剖学的部位で実施された。施設の病理医による両検体の公開検鏡および2回目のMDA(MDA2)で最終診断された後、匿名化されたTBLCおよびSLBスライドが外部専門家病理医(TVC)によって盲目的に評価された。κ一致係数および%一致率が、TBLC vs SLB、MDA2 vs TBLC、MDA2 vs SLBにおいて盲検化された病理医と施設病理医で比較検討された。
結果:
21人の患者が登録された。TBLCの検体サイズ中央値(長径)は7mm(IQR 5-8mm)だった。SLB検体サイズは平均46.1±13.8mmだった。一致係数および%一致率は、TBLC vs SLB:κ=0.22(95%信頼区間0.01-0.44), %一致率38%(95%信頼区間18-62)、MDA2 vs TBLC:κ=0.31(95%信頼区間0.06-0.56), %一致率48%(95%信頼区間26-70)、MDA2 vs SLB:κ=0.51(95%信頼区間0.27-0.75), %一致率62%(95%信頼区間38-82)だった。2例の気胸(9.5%)がTBLCで発症した。もし21人中11人(52%)の症例でSLBが実施されなかった場合、TBLCは異なる治療をもたらしたと考えられる。
結論:
ILDのアセスメントにおいてTBLCとSLBの病理学的な検討の一致率は不良であった。SLBはMDAで支持された最終診断とより一致していた。
by 倉原優
「中」と「外」から採取するので、厳密に同じ場所をとっているわけではないのですが、さりとて外科的肺生検のほうが検体量が大きいため、信頼性もそちらのほうが高くなります。
オルタナティブとして用いることができるかどうか、議論はまだまだ続く。
Romagnoli M, et al.
Poor Concordance between Sequential Transbronchial Lung Cryobiopsy and Surgical Lung Biopsy in the Diagnosis of Diffuse Interstitial Lung Diseases.
Am J Respir Crit Care Med. 2019 Mar 13. doi: 10.1164/rccm.201810-1947OC.
背景:
経気管支肺クライオバイオプシー(TBLC)と、組織検体を要する現在の間質性肺疾患(ILD)ゴールドスタンダードである外科的肺生検(SLB)の間の診断不一致についてはいまだ議論の余地がある。
目的:
同一患者で連続して実施されたTBLCとSLBの間の診断不一致、両処置の診断精度、多面的アセスメント(MDA)決定の変化について調べること。
方法:
初回MDAで非definite UIPパターン(胸部HRCT写真における)と診断されたILD患者の、2施設における前向き研究である。TBLCを行われた患者が、すみやかにビデオ補助胸腔鏡によるSLBを同一の解剖学的部位で実施された。施設の病理医による両検体の公開検鏡および2回目のMDA(MDA2)で最終診断された後、匿名化されたTBLCおよびSLBスライドが外部専門家病理医(TVC)によって盲目的に評価された。κ一致係数および%一致率が、TBLC vs SLB、MDA2 vs TBLC、MDA2 vs SLBにおいて盲検化された病理医と施設病理医で比較検討された。
結果:
21人の患者が登録された。TBLCの検体サイズ中央値(長径)は7mm(IQR 5-8mm)だった。SLB検体サイズは平均46.1±13.8mmだった。一致係数および%一致率は、TBLC vs SLB:κ=0.22(95%信頼区間0.01-0.44), %一致率38%(95%信頼区間18-62)、MDA2 vs TBLC:κ=0.31(95%信頼区間0.06-0.56), %一致率48%(95%信頼区間26-70)、MDA2 vs SLB:κ=0.51(95%信頼区間0.27-0.75), %一致率62%(95%信頼区間38-82)だった。2例の気胸(9.5%)がTBLCで発症した。もし21人中11人(52%)の症例でSLBが実施されなかった場合、TBLCは異なる治療をもたらしたと考えられる。
TBLC | SLB | |
患者1 | OP | 亜急性HP |
患者2 | UIP | CHP |
患者3 | UIP | UIP |
患者4 | 診断できず | PLCH |
患者5 | UIP | UIP |
患者6 | UIP | CHP |
患者7 | UIP | NSIP |
患者8 | RB-ILD | RB-ILD |
患者9 | 診断できず | UIP |
患者10 | PLCH | UIP |
患者11 | NSIP | NSIP |
患者12 | UIP | UIP |
患者13 | 診断できず | ALI |
患者14 | NSIP | lymphoid process |
患者15 | UIP | NSIP |
患者16 | 診断できず | UIP |
患者17 | UIP | UIP |
患者18 | NSIP | NSIP |
患者19 | UIP | UIP |
患者20 | RB-ILD | NSIP |
患者21 | 慢性リンパ性白血病 | DIP |
結論:
ILDのアセスメントにおいてTBLCとSLBの病理学的な検討の一致率は不良であった。SLBはMDAで支持された最終診断とより一致していた。
by otowelt
| 2019-04-04 00:35
| びまん性肺疾患
近畿中央呼吸器センター 呼吸器内科の 倉原優 と申します。医療従事者の皆様が、患者さんに幸せを還元できるようなブログでありたいと思います。原稿・執筆依頼はメールでお願いします。連絡先:krawelts@yahoo.co.jp
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