メタアナリシス:急性低酸素性呼吸不全に対するAPRVの有用性

メタアナリシス:急性低酸素性呼吸不全に対するAPRVの有用性_e0156318_21563989.jpg APRVの有用性を記した論文です。研修医の頃、「この患者のPEEPはいくらなんだ?」とAPRVを知らない医師に聞かれ、答えられなかった記憶があります。

Carsetti A, et al.
Airway pressure release ventilation during acute hypoxemic respiratory failure: a systematic review and meta-analysis of randomized controlled trials.
Ann Intensive Care. 2019 Apr 4;9(1):44. doi: 10.1186/s13613-019-0518-7.


背景および方法:
 APRV(airway pressure release ventilation)は、open lung ventilationのコンセプトに基づいた急性呼吸不全に対する換気モードの1つである。われわれは、システマティックレビューおよびメタアナリシスをおこない、低酸素性呼吸不全の成人患者にAPRVあるいは通常の人工呼吸管理をおこなった場合に人工呼吸器非装着日数(28日時点)が減らせるかどうか調べた。セカンダリアウトカムとして、3日目のP/F比、ICU入室期間、ICUおよび院内死亡率、平均動脈圧(MAP)、気圧性外傷、鎮静レベルが設定された。われわれは、MEDLINE、Cochraneデータベースなどから2018年12月までの臨床試験を抽出した。

結果:
 5つのランダム化比較試験・330人の患者が解析に組み込まれた。28日時点での人工呼吸器非装着日数は、APRVと通常換気で平均差6.04日(95%信頼区間2.12-9.96、p=0.003、I2=65%、p=0.02)だった。APRVで治療された患者のほうがICU入室期間が短く(平均差3.94日、95%信頼区間1.44-6.45、p=0.002、I2=37%、p=0.19)、院内死亡率が低かった(率差0.16、95%信頼区間0.02-0.29, p = 0.03; I2 = 0, p = 0.5])。3日時点でのP/F比には群間差はなかった(平均差40.48 mmHg、95%信頼区間- 25.78~106.73, p = 0.23; I2 = 92%, p < 0.001)。MAPはAPRVのほうが有意に高かった(平均差5 mmHg、95%信頼区間1.43-8.58, p = 0.006; I2= 0%, p = 0.92)。そして、2換気戦略において気胸の発症にも有意差はなかった(率比1.94、95%信頼区間0.54-6.94, p = 0.31; I2= 0%, p = 0.74)。ICU死亡率、鎮静レベルは定量解析には組み入れられなかった。

結論:
 急性低酸素性呼吸不全の成人患者に対するAPRVは通常換気モードよりも28日時点での人工呼吸器非装着日数や院内死亡率を減少させた。血行動態や気圧性外傷などの合併症は有意ではなかった。しかしながら、エビデンスレベルが低い研究が多く、異質性がみられることから解釈には注意が必要である。



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by otowelt | 2019-05-09 00:11 | 集中治療

近畿中央呼吸器センター 呼吸器内科の 倉原優 と申します。医療従事者の皆様が、患者さんに幸せを還元できるようなブログでありたいと思います。原稿・執筆依頼はメールでお願いします。連絡先:krawelts@yahoo.co.jp


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