この20年、肺癌の生存期間はどうなったか?

この20年、肺癌の生存期間はどうなったか?_e0156318_10535567.png EGFR陽性NSCLCやALK陽性NSCLCはこれ以上開発されても、OSがプラトーに達する可能性がありますが、Best is bestには違いないはず。

Takano N, et al.
Improvement in the survival of patients with stage IV non-small-cell lung cancer: Experience in a single institutional 1995-2017.
Lung Cancer. 2019 May;131:69-77. doi: 10.1016/j.lungcan.2019.03.008.


目的:
 過去20年のあいだに、進行非小細胞肺癌(NSCLC)の治療に対して適用されるようになった抗癌剤がいくつか登場し、患者マネジメントは大きく変革した。しかしながら、臨床プラクティスにおける患者の生存的恩恵についての情報は限られている。

方法:
 公益財団法人がん研究会(JFCR)における病期IVのNSCLC患者の生存期間を1995年1月1日から2017年3月1日まで解析した。合計1547人の連続患者がこのケースシリーズに組み入れられた。この解析では、5つの診断時期を評価した:1995~1999年(ピリオドA)、2000~2004年(ピリオドB)、2005年~2009年(ピリオドC)、2010年~2014年(ピリオドD)、2015年~2017年(ピリオドE)。ピリオドごとの全生存期間(OS)を傾向スコアマッチ前後で比較し、またEGFR遺伝子変異、ALK融合遺伝子、その他のドライバー遺伝子の有無によっても比較した。

結果:
 過去20年、病期IVのNSCLC患者のOSは改善した。OS中央値は、ピリオドA:9.0ヶ月、ピリオドB:11.0ヶ月、ピリオドC:13.7ヶ月、ピリオドD:17.9ヶ月だった。ピリオドEは未到達だった。ベースラインの既知の特性について傾向スコアマッチした後でも、OSは同様に改善の傾向を示した。しかしながら、日本でいくつかのチロシンキナーゼ阻害剤が使用できるようになったものの、EGFR遺伝子変異あるいはALK融合遺伝子の患者のOSはこの期間には改善しなかった。ドライバー遺伝子変異がない患者のOSはピリオドEの期間わずかに延長する傾向にあった。

結論:
 病期IVのNSCLCに対する新しいクラスの抗癌剤は、患者の生存期間を有意に延長してきた。しかしながら、同系統の薬物の承認は、生存期間のさらなる改善とは関連しないかもしれない。





by otowelt | 2019-06-06 00:50 | 肺癌・その他腫瘍

近畿中央呼吸器センター 呼吸器内科の 倉原優 と申します。医療従事者の皆様が、患者さんに幸せを還元できるようなブログでありたいと思います。原稿・執筆依頼はメールでお願いします。連絡先:krawelts@yahoo.co.jp


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