慢性II型呼吸不全に対するネーザルハイフローと非侵襲性換気の比較

慢性II型呼吸不全に対するネーザルハイフローと非侵襲性換気の比較_e0156318_1633480.jpg 単施設でクロスオーバーすると、あっという間に試験が終わるので、計画の立案としてはラクですね。

McKinstry S, et al.
Nasal high-flow therapy compared with non-invasive ventilation in COPD patients with chronic respiratory failure: A randomized controlled cross-over trial.
Respirology. 2019 May 13. doi: 10.1111/resp.13575.


背景および目的:
 非侵襲性換気(NIV)は、COPDに続発したII型呼吸不全の標準的ケアの一部にあたるが、忍容性が不良かもしれない。これまでのエビデンスでは、ネーザルハイフロー(NHF)治療はCOPDにおける高炭酸ガス血症を改善させるかもしれないとされており、忍容性も良好である。われわれは、COPDおよび慢性II型呼吸不全の患者におけるNHFとNIVを比較した。

方法:
 ニュージーランドの単施設において単盲検ランダム化比較クロスオーバー試験が実施された。24人の安定期にある高炭酸ガス血症(PcapCO2 45mmHg以上)のCOPD患者が以下の治療を受けた:NHF45L/分およびNIV IPAP15cmH2O/EPAP4cmH2Oを60分、15分のウォッシュアウト間隔を設定。プライマリアウトカムは、ベースラインで補正した60分時点での経皮的二酸化炭素分圧(PtCO2)とした。

結果:
 患者の平均年齢は68±9歳だった(中央値70歳)。11人(45.8%)が女性。平均mMRCスケールは2.2±0.8である。
 NIVはNHFよりもPtCO2を減少させた(60分時点で平均-5.3±5.0 vs -2.5±3.5mmHg、差-2.8[95%信頼区間-5.0~-0.5]、p=0.021)。全ポイントを通しての差は-2.5mmHg(95%信頼区間-4.0~-0.5、p=0.016)だった。PtCO2が4mmHg以上あるいは8mmHg以上減少した患者の頻度には有意差はなかった。
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(PtCO2:文献より引用)

 被験者はNHFのことを、簡便に適用でき、快適でフィットしやすいとよりよく評価した(p<0.004)。
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(快適性の質問:文献より引用)

結論:
 高炭酸ガス血症のある安定期COPD患者において、NIVはNHFと比べてPtCO2をより減少させたが、臨床的意義は不明である。NHFはNIVに比べて忍容性に優れ、II型呼吸不全の患者の一部には治療オプションとなりうるかもしれない。



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by otowelt | 2019-06-02 00:37 | 気管支喘息・COPD

近畿中央呼吸器センター 呼吸器内科の 倉原優 と申します。医療従事者の皆様が、患者さんに幸せを還元できるようなブログでありたいと思います。原稿・執筆依頼はメールでお願いします。連絡先:krawelts@yahoo.co.jp


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