SENSCIS試験:全身性強皮症間質性肺疾患に対するニンテダニブ
2019年 05月 24日

Oliver Distler, et al.
Nintedanib for Systemic Sclerosis–Associated Interstitial Lung Disease
NEJM, May 20, 2019 DOI: 10.1056/NEJMoa1903076
背景:
間質性肺疾患(ILD)は全身性強皮症(SSc)ではよくみられる表現型であり、SSc関連死亡の主たる原因である。チロシンキナーゼ阻害剤であるニンテダニブは、SScおよびILDの臨床前モデルにおいて抗線維化・抗炎症作用をもたらすことが示されている。
方法:
われわれはランダム化二重盲検プラセボ対照試験を実施し、SSc関連ILDの患者におけるニンテダニブの有効性と安全性を検証した。過去7年以内に初回非Raynaud現象および最低10%の肺の線維化がある高分解能CTを呈するSScを有する患者を1:1の割合でニンテダニブ150mg1日2回経口投与あるいはプラセボにランダムに割り付けた。ベースラインの肺機能については、%DLCO30~89%、%FVCは40%を必要条件とした。肺高血圧症合併例は除外された。
プライマリエンドポイントは努力性肺活量(FVC)の年間減少率とし、52週間にわたって調査された。キーセカンダリエンドポイントは、ベースラインから52週までの修正Rodnan皮膚スコア(mRSS)およびSGRQスコアのベースラインからの絶対変化とした。mRSSのMCIDははっきりとしたエビデンスはないが、3-4点あたりではないかと考えられている(Arthritis Res Ther 2019;21:23-23.)。
結果:
576人が少なくともニンテダニブあるいはプラセボを1回投与された。51.9%がびまん型全身性強皮症であり、48.4%がベースラインにミコフェノール酸を投与されていた。女性のほうが多く、ニンテダニブ群76.7%、プラセボ群73.6%だった。年齢はニンテダニブ群54.6±11.8歳、プラセボ群53.4±12.6歳だった。約半数がdiffuse cutaneous SScだった。ベースラインの%FVCは、ニンテダニブ群72.4±16.8%、プラセボ群72.7±16.6%だった。ベースラインの%DLCOは、ニンテダニブ群52.9±5.1%、プラセボ群53.2±15.1%だった。
プライマリエンドポイント解析では、補正FVC年間減少はニンテダニブ群-52.4mL/年、プラセボ群-93.3mL/年だった(差41.0mL/年、95%信頼区間2.9-79.0、p=0.04)。欠損データに対する多重代入による感度分析では、プライマリエンドポイント達成P値は0.06から0.10の範囲だった。ベースラインから52週までのmRSSトータルスコアおよびSGRQスコアの変化は統計学的に有意差はなかった(それぞれ-0.21,95%信頼区間-0.94~0.53、p=0.58、1.69、95%信頼区間-0.73~4.12)。下痢がもっともよくみられた副作用イベントであり、ニンテダニブ群の75.7%、プラセボ群の31.6%にみられた。
結論:
SSc-ILD患者において、ニンテダニブはプラセボよりも年間FVC減少率を減少させるが、その他の表現型に対するニンテニブの利益は臨床的には認められない。この試験におけるニンテダニブの副作用イベントプロファイルは、特発性肺線維症患者で観察されたものと同等で、下痢を含む消化器系の副作用イベントがプラセボよりニンテダニブにおいてよくみられた。
by otowelt
| 2019-05-24 00:28
| びまん性肺疾患