SIENA試験:喀痰好酸球比率が低い喘息患者では吸入ステロイドは効果に乏しい
2019年 05月 23日
小児持ち越し喘息例は基本的に2型炎症が多いと思っている呼吸器内科医にとって、衝撃的な結果ではあります。
Stephen C. Lazarus, et al.
Mometasone or Tiotropium in Mild Asthma with a Low Sputum Eosinophil Level
NEJM, DOI: 10.1056/NEJMoa1814917
背景:
多くの軽症持続型喘息患者において、喀痰中好酸球比率は2%未満(低好酸球値)である。これらの患者に対する適切な治療は不明である。
方法:
この42週におよぶ二重盲検クロスオーバー試験において、われわれは12歳以上の軽症持続型喘息患者295人を登録し、モメタゾン(吸入ステロイド)、チオトロピウム(長時間作用性抗コリン薬)、プラセボのいずれかに割り付けた。患者は喀痰中好酸球比率に応じて層別化された(2%未満あるいは2%以上)。プライマリアウトカムは、事前に規定した喘息コントロールが試験薬のいずれかとプラセボで差があった、喀痰中好酸球比率が低い患者における、プラセボと比較したモメタゾンの反応性およびプラセボと比較したチオトロピウムの反応性である。治療失敗、喘息コントロール日数、1秒量を組み込んだ階層的な複合アウトカムに応じて効果が定められ、両側検定でp値が0.025未満の場合に統計学的に有意とした。セカンダリアウトカムは、喀痰中好酸球比率高値の患者と低値の患者における結果の比較である。
結果:
患者のち58人(20%)が12~18歳と若年層であった。全体で、73%の患者(221人)が喀痰中好酸球比率低値とみなされた。221人の平均年齢は31.2±13.8歳で、男性は34%だった。喀痰中好酸球比率高値群の患者の平均年齢は31.1±14.2歳で、男性は47%だった。喘息罹患歴は前者が19.2±10.2年、後者が20.0±12.2年で、初発年齢はおおむね7~8歳の小児喘息持ち越し例であった。気道可逆性は喀痰中好酸球比率低値群で9.6±7.1%、高値群で12.7±8.5%だった。ACT中央値は両群ともに21点だった。
好酸球比率低値だった患者のうち59%が試験薬とプラセボで喘息コントロールに差がみられた。しかしながら、プラセボと比較してモメタゾンあるいはチオトロピウムの反応性に有意差はなかった。喀痰中好酸球比率低値群で効果に差があった患者において、モメタゾンに対して効果が高かった患者(57%、95%信頼区間48-66)とプラセボに対して効果が高かった患者(43%、95%信頼区間34-52)に有意差はなかった(p=0.14)。また、チオトロピウムに対して効果が高かった患者(60%、95%信頼区間51-68%)とプラセボに対して効果が高かった患者(40%、95%信頼区間32-49)にも有意差はなかった(p=0.029)。喀痰好酸球比率高値の患者において、モメタゾンの効果が高かった患者はプラセボよりも有意に高かったが(74% vs 26%)、チオトロピウムとプラセボの間には有意差はなかった(57% vs 43%)。
有害事象はほとんどみられず、喀痰中好酸球比率低値群と高値群でも有意差は観察されなかった。
結論:
喀痰中好酸球比率が低い軽症持続型喘息患者のほとんどが、プラセボと比較してモメタゾンやチオトロピウムに有意な効果を示さなかった。これらのデータは、喀痰中好酸球比率が低い患者における吸入ステロイドとその他治療を比較する臨床試験を要することを意味する。
Stephen C. Lazarus, et al.
Mometasone or Tiotropium in Mild Asthma with a Low Sputum Eosinophil Level
NEJM, DOI: 10.1056/NEJMoa1814917
背景:
多くの軽症持続型喘息患者において、喀痰中好酸球比率は2%未満(低好酸球値)である。これらの患者に対する適切な治療は不明である。
方法:
この42週におよぶ二重盲検クロスオーバー試験において、われわれは12歳以上の軽症持続型喘息患者295人を登録し、モメタゾン(吸入ステロイド)、チオトロピウム(長時間作用性抗コリン薬)、プラセボのいずれかに割り付けた。患者は喀痰中好酸球比率に応じて層別化された(2%未満あるいは2%以上)。プライマリアウトカムは、事前に規定した喘息コントロールが試験薬のいずれかとプラセボで差があった、喀痰中好酸球比率が低い患者における、プラセボと比較したモメタゾンの反応性およびプラセボと比較したチオトロピウムの反応性である。治療失敗、喘息コントロール日数、1秒量を組み込んだ階層的な複合アウトカムに応じて効果が定められ、両側検定でp値が0.025未満の場合に統計学的に有意とした。セカンダリアウトカムは、喀痰中好酸球比率高値の患者と低値の患者における結果の比較である。
結果:
患者のち58人(20%)が12~18歳と若年層であった。全体で、73%の患者(221人)が喀痰中好酸球比率低値とみなされた。221人の平均年齢は31.2±13.8歳で、男性は34%だった。喀痰中好酸球比率高値群の患者の平均年齢は31.1±14.2歳で、男性は47%だった。喘息罹患歴は前者が19.2±10.2年、後者が20.0±12.2年で、初発年齢はおおむね7~8歳の小児喘息持ち越し例であった。気道可逆性は喀痰中好酸球比率低値群で9.6±7.1%、高値群で12.7±8.5%だった。ACT中央値は両群ともに21点だった。
好酸球比率低値だった患者のうち59%が試験薬とプラセボで喘息コントロールに差がみられた。しかしながら、プラセボと比較してモメタゾンあるいはチオトロピウムの反応性に有意差はなかった。喀痰中好酸球比率低値群で効果に差があった患者において、モメタゾンに対して効果が高かった患者(57%、95%信頼区間48-66)とプラセボに対して効果が高かった患者(43%、95%信頼区間34-52)に有意差はなかった(p=0.14)。また、チオトロピウムに対して効果が高かった患者(60%、95%信頼区間51-68%)とプラセボに対して効果が高かった患者(40%、95%信頼区間32-49)にも有意差はなかった(p=0.029)。喀痰好酸球比率高値の患者において、モメタゾンの効果が高かった患者はプラセボよりも有意に高かったが(74% vs 26%)、チオトロピウムとプラセボの間には有意差はなかった(57% vs 43%)。
有害事象はほとんどみられず、喀痰中好酸球比率低値群と高値群でも有意差は観察されなかった。
結論:
喀痰中好酸球比率が低い軽症持続型喘息患者のほとんどが、プラセボと比較してモメタゾンやチオトロピウムに有意な効果を示さなかった。これらのデータは、喀痰中好酸球比率が低い患者における吸入ステロイドとその他治療を比較する臨床試験を要することを意味する。
by otowelt
| 2019-05-23 00:05
| 気管支喘息・COPD