抗結核薬の副作用の実際
2019年 07月 20日
・はじめに
ここでは、もっともよく使われる抗結核薬であるイソニアジド(INH)、リファンピシン(RFP)、エタンブトール(EB)、ピラジナミド(PZA)の4剤の副作用について記載します。それぞれ副作用があるので、患者さんに1つ1つ説明することが望ましいのですが、まれな副作用まで説明していると日が暮れてしまいます。ゆえに、頻度が高く代表的なものを伝えることが望ましいと思います。
・皮疹
実臨床で一番多いのは皮疹です。これはどの製剤でも起こりえるため、原因薬剤の同定が難しいです。あまりにも皮疹が重症の場合、いったん休薬することになりますが、軽度のものであればステロイド含有軟膏や保湿で対応することが多いです。
また、どの薬剤にもみられるやっかいな副作用として肝障害も重要です。多くがPZAやINHによるものですが、ときにビリルビン上昇を伴うRFPの肝障害もあるため注意が必要です。定期的に採血する意義は肝障害の早期発見にあります。
・INH
成書には代表的なINHの副作用として末梢神経障害が挙げられていますが、個人的にINHを投与していて末梢神経障害に難渋した経験はほとんどありません。ただ、アルコール多飲者、高齢者、妊婦などビタミンB6を欠乏しやすい患者に対してはピリドキシンの補充は必要でしょう。ちなみに、INHで頻度が高い副作用は、やはり肝障害です。40~69歳の患者における潜在性結核感染症に対するINH単剤使用例において、ASTあるいはALTが500IU/L以上になる頻度は4~6%とされています1)。
・RFP
RFPの代表的な副作用も肝障害とされていますが、頻度が高いのは嘔気などの消化器症状です。あまりにも症状が強いときは、いったん休薬するか、朝・昼・夕に分割するなどの工夫をしてリトライしたいところです。RFPの肝障害は胆汁うっ滞型の重症のものが多いため、早期発見に努めるべきです。また、RFP内服中は体液、特に尿が赤色になることは知っておきたいです。視界がオレンジ色のように見えると訴えて来院した患者にEBの副作用を疑ったことがありますが、実は長く装着していたコンタクトレンズがリファンピシン色に着色していたという事例を経験したことがあります。
・EB
EBの視力障害については、現在日本で用いられているような用量であればほとんど問題ないとされていますが、用量依存性に起こりうるため、維持期治療がINHとEBの2剤になっているようなケースでは注意が必要です(その場合、EBを1年以上継続することが多いため)。網膜疾患がある場合にはできるだけEBの処方を避けているが、緑内障があるからといって全例EBを使わないというのは過度な懸念です。EBを内服して3日程度で目がぼやけると訴える人も多いですが、基本的に内服数ヶ月以降に起こる副作用であり、「視力障害が起こるかもしれない」という医療者側からの情報提供が患者心理に影響している可能性が高そうです。
・PZA
PZAでもっとも懸念されるのはやはり肝障害です。投与早期からトランスアミナーゼの急激な増加がみられることがあり、投与患者の10%程度にみられるため注意が必要です2)。治療初期にトランスアミナーゼの上昇があれば、たいがいPZAです。
また、PZAは内服すればほぼ必発で尿酸値が上昇します。しばしば10 mg/dLを超えて上昇します。この薬剤性高尿酸血症は痛風を起こすリスクが極端に高くなるわけではありませんが、高尿酸血症をもともと有する患者には用いないほうがよいです。個人的には12mg/dLを超えてくるケースではベンズブロマロンを用いています。アロプリノールは痛風発作を起こした事例が報告されており、避けたほうがよいとされています。
(参考文献)
1) 結核療法研究協議会内科会. 日本における潜在性結核感染症治療の状況、続報. 結核. 2018;93(11-12):585-9.
2)Shu CC, et al. Hepatotoxicity due to first-line anti-tuberculosis drugs: a five-year experience in a Taiwan medical centre. Int J Tuberc Lung Dis. 2013 Jul;17(7):934-9.
ここでは、もっともよく使われる抗結核薬であるイソニアジド(INH)、リファンピシン(RFP)、エタンブトール(EB)、ピラジナミド(PZA)の4剤の副作用について記載します。それぞれ副作用があるので、患者さんに1つ1つ説明することが望ましいのですが、まれな副作用まで説明していると日が暮れてしまいます。ゆえに、頻度が高く代表的なものを伝えることが望ましいと思います。
・皮疹
実臨床で一番多いのは皮疹です。これはどの製剤でも起こりえるため、原因薬剤の同定が難しいです。あまりにも皮疹が重症の場合、いったん休薬することになりますが、軽度のものであればステロイド含有軟膏や保湿で対応することが多いです。
また、どの薬剤にもみられるやっかいな副作用として肝障害も重要です。多くがPZAやINHによるものですが、ときにビリルビン上昇を伴うRFPの肝障害もあるため注意が必要です。定期的に採血する意義は肝障害の早期発見にあります。
・INH
成書には代表的なINHの副作用として末梢神経障害が挙げられていますが、個人的にINHを投与していて末梢神経障害に難渋した経験はほとんどありません。ただ、アルコール多飲者、高齢者、妊婦などビタミンB6を欠乏しやすい患者に対してはピリドキシンの補充は必要でしょう。ちなみに、INHで頻度が高い副作用は、やはり肝障害です。40~69歳の患者における潜在性結核感染症に対するINH単剤使用例において、ASTあるいはALTが500IU/L以上になる頻度は4~6%とされています1)。
・RFP
RFPの代表的な副作用も肝障害とされていますが、頻度が高いのは嘔気などの消化器症状です。あまりにも症状が強いときは、いったん休薬するか、朝・昼・夕に分割するなどの工夫をしてリトライしたいところです。RFPの肝障害は胆汁うっ滞型の重症のものが多いため、早期発見に努めるべきです。また、RFP内服中は体液、特に尿が赤色になることは知っておきたいです。視界がオレンジ色のように見えると訴えて来院した患者にEBの副作用を疑ったことがありますが、実は長く装着していたコンタクトレンズがリファンピシン色に着色していたという事例を経験したことがあります。
・EB
EBの視力障害については、現在日本で用いられているような用量であればほとんど問題ないとされていますが、用量依存性に起こりうるため、維持期治療がINHとEBの2剤になっているようなケースでは注意が必要です(その場合、EBを1年以上継続することが多いため)。網膜疾患がある場合にはできるだけEBの処方を避けているが、緑内障があるからといって全例EBを使わないというのは過度な懸念です。EBを内服して3日程度で目がぼやけると訴える人も多いですが、基本的に内服数ヶ月以降に起こる副作用であり、「視力障害が起こるかもしれない」という医療者側からの情報提供が患者心理に影響している可能性が高そうです。
・PZA
PZAでもっとも懸念されるのはやはり肝障害です。投与早期からトランスアミナーゼの急激な増加がみられることがあり、投与患者の10%程度にみられるため注意が必要です2)。治療初期にトランスアミナーゼの上昇があれば、たいがいPZAです。
また、PZAは内服すればほぼ必発で尿酸値が上昇します。しばしば10 mg/dLを超えて上昇します。この薬剤性高尿酸血症は痛風を起こすリスクが極端に高くなるわけではありませんが、高尿酸血症をもともと有する患者には用いないほうがよいです。個人的には12mg/dLを超えてくるケースではベンズブロマロンを用いています。アロプリノールは痛風発作を起こした事例が報告されており、避けたほうがよいとされています。
(参考文献)
1) 結核療法研究協議会内科会. 日本における潜在性結核感染症治療の状況、続報. 結核. 2018;93(11-12):585-9.
2)Shu CC, et al. Hepatotoxicity due to first-line anti-tuberculosis drugs: a five-year experience in a Taiwan medical centre. Int J Tuberc Lung Dis. 2013 Jul;17(7):934-9.
by otowelt
| 2019-07-20 00:50
| レクチャー