胸腔内感染症のシステマティックレビュー

胸腔内感染症のシステマティックレビュー_e0156318_10322082.jpg 海外では医療費はやはり高い傾向にあるようで、低収入地域の研究が偏って少ないみたいですね。

Tamsin N. Cargill, et al.
A systematic review of comorbidities and outcomes of adult patients with pleural infection
European Respiratory Journal 2019; DOI: 10.1183/13993003.00541-2019


背景:
 胸腔内感染症は、死亡の重要な原因の1つである。この研究は、胸腔内感染症患者の併存症や臨床アウトカムの世界的なパターンを調べることを目的とした。

方法:
 2000年から2017年までの、成人胸腔内感染症患者を電子データベースから登録した。結核性、真菌性、肺手術後感染症の症例は除外された。2人のレビュアーが独自に抽出をこころみた。

結果:
 211研究が適格基準を満たした。134文献(22万7898人、平均年齢52.8歳)が併存症やアウトカムデータを有していた。ほとんどの研究が後ろ向き観察研究(104研究、78%)であり、東アジアが多かった(33研究、24%)。続いて北米が多かった(27研究、20%)。5研究(5万756人)が併存症について報告していた。併存症を有する頻度は72%(IQR58-83%)で、呼吸器疾患(20%、IQR16-32%)、心疾患(19%、IQR15-27%)が多かった。
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(合併症その1:文献より引用)
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(合併症その2:文献より引用)

 125研究(19万2298人)がアウトカムデータを有していた。入院期間中央値は19日(IQR 13-27日)で、院内あるいは30日死亡率の中央値は4%(IQR1-11%)だった。高収入地域(100研究、74%)の患者は、高齢(平均56.5歳 vvs 42.5歳, p<0.0001)の人が多かったが、併存症や入院アウトカムについては有意差はなかった。

結論:
 胸腔内感染症の患者は、併存症頻度が高く、入院期間が長い。ほとんどの報告は、高収入地域における研究結果によるものだった。低収入地域におけるデータを調べることで、地域傾向や適切なリソース提供についての情報が得られるだろう。



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by otowelt | 2019-08-30 00:39 | 感染症全般

近畿中央呼吸器センター 呼吸器内科の 倉原優 と申します。医療従事者の皆様が、患者さんに幸せを還元できるようなブログでありたいと思います。原稿・執筆依頼はメールでお願いします。連絡先:krawelts@yahoo.co.jp


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