PAGE試験:軽症~中等症肺胞蛋白症に対するGM-CSF吸入療法
2019年 09月 07日
肺胞蛋白症に対するGM-CSF治療は自然寛解例が20%存在するため評価が難しいとされていますが、軽症~中等症例におけるPAGE試験の結果がNEJMに掲載されました。
Tazawa R, et al.
Inhaled GM-CSF for Pulmonary Alveolar Proteinosis
N Engl J Med 2019; 381:923-932
背景:
肺胞蛋白症とは、肺胞内にサーファクタントが異常に蓄積する特徴を有す疾患である。その多くは自己免疫性であり、肺胞マクロファージによる肺サーファクタントの除去を阻害する顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)に対する自己抗体が原因とされている。非ランダム化第2相試験において、重症肺胞蛋白症患者に対する組換えヒトGM-CSF吸入に軽度の治療効果が示されたものの、軽症~中等症の患者に対する有効性はまだ明らかとなっていない。
方法:
二重盲検プラセボ対照試験(PAGE試験)において、室内気のPaO2が70mmHg 未満(有症状の場合は75mmHg未満)の自己免疫性肺胞蛋白症患者64人を対象に、組換えヒト GM-CSF(サルグラモスチム)125μgあるいはプラセボ1日2回7日間の吸入を隔週で24週間投与した(プラセボ群の1人は脱落)。プラセボ群に割り付けられた肺胞蛋白症患者が増悪する可能性を除外するため、重症肺胞蛋白症患者(PaO2<50 mmHg)は本研究から除外となった。プライマリエンドポイントは、A-aDO2のベースラインから治療25週目までの変化量に設定。セカンダリエンドポイントとして、症状(咳嗽、喀痰産生、労作時呼吸困難)、mMRCスケール(0-4点)、肺活量、DLco、PaO2、6分間歩行距離、胸部HRCT所見、血清KL-6、血清CEA、血清SP-D、血清SP-A、血清高感度CRP、血清MCP-1、抗GM-CSF抗体、CATスコアが設定された。また胸部CTで各患者ごとに平均肺濃度をHUで算出し、濃度上昇を評価した。
結果:
2016年9月から2016年12月までに78人の肺胞蛋白症患者がスクリーニングされた。解析対象となったのはプラセボ群1人脱落を計算すると、63人(GM-CSF群33人、プラセボ群30人)だった。脱落前の特性データでは、GM-CSF群の平均年齢は56.5±12.4歳、プラセボ群の平均年齢は57.2±12.9歳だった。いずれの群も女性が42%だった。mMRCはそれぞれ1.55±0.94点、1.42±0.96点だった。平均PaO2は、それぞれ66.4±8.66mmHg, 68.8±8.96mmHgで、平均A-aDO2は、37.5±9.99mmHg、35.2±11.4mmHgだった。血清KL-6は両群とも極めて高値であり、平均値でそれぞれ5264±3102U/mL, 8104±10345U/mLだった。
A-aDO2の平均(±標準偏差)変化量は、GM-CSF群(33人)のほうがプラセボ群(30人)より有意に改善した(ベースラインからの変化量平均-4.50±9.03 mmHg vs 0.17±10.50 mmHg,P=0.02)。 (文献より引用)
胸部CTにおける肺野濃度変化のベースラインから治療25週目までの変化量についても、GM-CSF群のほうが良好だった(群間差-36.08 HU,95%信頼区間 -61.58~-6.99)。重篤な有害事象は、GM-CSF群6人とプラセボ群3人にみられた。
平均6分間歩行距離はベースラインでほとんどが360mを超えており、本研究の対象例では有効性を示すにいたらなかった。
ベースラインから治療25週目までの平均血清KL-6変化は、GM-CSF群で −1199±3098 U/mL、プラセボ群で4.70±9154 U/mLと差がみられ、これは過去の研究でも示されている通りだった。
結論:
このランダム化比較試験において、組換えヒトGM-CSF吸入は軽症~中等症の肺胞蛋白症患者に対して動脈血酸素分圧を改善させるという点においては有益であるものの、臨床上の利益(QOL質問票スコア改善や6分間歩行距離改善)までは改善させなかった。
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Tazawa R, et al.
Inhaled GM-CSF for Pulmonary Alveolar Proteinosis
N Engl J Med 2019; 381:923-932
背景:
肺胞蛋白症とは、肺胞内にサーファクタントが異常に蓄積する特徴を有す疾患である。その多くは自己免疫性であり、肺胞マクロファージによる肺サーファクタントの除去を阻害する顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)に対する自己抗体が原因とされている。非ランダム化第2相試験において、重症肺胞蛋白症患者に対する組換えヒトGM-CSF吸入に軽度の治療効果が示されたものの、軽症~中等症の患者に対する有効性はまだ明らかとなっていない。
方法:
二重盲検プラセボ対照試験(PAGE試験)において、室内気のPaO2が70mmHg 未満(有症状の場合は75mmHg未満)の自己免疫性肺胞蛋白症患者64人を対象に、組換えヒト GM-CSF(サルグラモスチム)125μgあるいはプラセボ1日2回7日間の吸入を隔週で24週間投与した(プラセボ群の1人は脱落)。プラセボ群に割り付けられた肺胞蛋白症患者が増悪する可能性を除外するため、重症肺胞蛋白症患者(PaO2<50 mmHg)は本研究から除外となった。プライマリエンドポイントは、A-aDO2のベースラインから治療25週目までの変化量に設定。セカンダリエンドポイントとして、症状(咳嗽、喀痰産生、労作時呼吸困難)、mMRCスケール(0-4点)、肺活量、DLco、PaO2、6分間歩行距離、胸部HRCT所見、血清KL-6、血清CEA、血清SP-D、血清SP-A、血清高感度CRP、血清MCP-1、抗GM-CSF抗体、CATスコアが設定された。また胸部CTで各患者ごとに平均肺濃度をHUで算出し、濃度上昇を評価した。
結果:
2016年9月から2016年12月までに78人の肺胞蛋白症患者がスクリーニングされた。解析対象となったのはプラセボ群1人脱落を計算すると、63人(GM-CSF群33人、プラセボ群30人)だった。脱落前の特性データでは、GM-CSF群の平均年齢は56.5±12.4歳、プラセボ群の平均年齢は57.2±12.9歳だった。いずれの群も女性が42%だった。mMRCはそれぞれ1.55±0.94点、1.42±0.96点だった。平均PaO2は、それぞれ66.4±8.66mmHg, 68.8±8.96mmHgで、平均A-aDO2は、37.5±9.99mmHg、35.2±11.4mmHgだった。血清KL-6は両群とも極めて高値であり、平均値でそれぞれ5264±3102U/mL, 8104±10345U/mLだった。
A-aDO2の平均(±標準偏差)変化量は、GM-CSF群(33人)のほうがプラセボ群(30人)より有意に改善した(ベースラインからの変化量平均-4.50±9.03 mmHg vs 0.17±10.50 mmHg,P=0.02)。
胸部CTにおける肺野濃度変化のベースラインから治療25週目までの変化量についても、GM-CSF群のほうが良好だった(群間差-36.08 HU,95%信頼区間 -61.58~-6.99)。重篤な有害事象は、GM-CSF群6人とプラセボ群3人にみられた。
平均6分間歩行距離はベースラインでほとんどが360mを超えており、本研究の対象例では有効性を示すにいたらなかった。
ベースラインから治療25週目までの平均血清KL-6変化は、GM-CSF群で −1199±3098 U/mL、プラセボ群で4.70±9154 U/mLと差がみられ、これは過去の研究でも示されている通りだった。
結論:
このランダム化比較試験において、組換えヒトGM-CSF吸入は軽症~中等症の肺胞蛋白症患者に対して動脈血酸素分圧を改善させるという点においては有益であるものの、臨床上の利益(QOL質問票スコア改善や6分間歩行距離改善)までは改善させなかった。
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by otowelt
| 2019-09-07 08:03
| びまん性肺疾患