LIBERTY NP SINUS試験:鼻ポリープ合併重症鼻副鼻腔炎に対するデュピルマブ

LIBERTY NP SINUS試験:鼻ポリープ合併重症鼻副鼻腔炎に対するデュピルマブ_e0156318_13451472.png デュピルマブのLIBERTY NP SINUS試験2つです。

・参考記事:LIBERTY ASTHMA QUEST研究:コントロール不良喘息に対するデュピルマブの有効性
・参考記事:LIBERTY ASTHMA VENTURE研究:ステロイド依存性喘息に対するデュピルマブの有効性

Bachert C, et al.
Efficacy and safety of dupilumab in patients with severe chronic rhinosinusitis with nasal polyps (LIBERTY NP SINUS-24 and LIBERTY NP SINUS-52): results from two multicentre, randomised, double-blind, placebo-controlled, parallel-group phase 3 trials.
Lancet. 2019 Sep 19. pii: S0140-6736(19)31881-1. doi: 10.1016/S0140-6736(19)31881-1.


背景:
 鼻ポリープを伴う慢性鼻副鼻腔炎(CRSwNP)の患者は、一般的に強い症状を有し、健康関連QOLが悪化しており、しばしば全身性ステロイド使用や外科手術を要する。デュピルマブは、2型炎症のキードライバーとなっているIL-4とIL-13を阻害する完全ヒト化モノクローナル抗体であり、アトピー性皮膚炎と喘息に適用される。今回の2研究において、われわれは、全身性ステロイドや外科手術、またその両方を用いたことがあるCRSwNP患者に対するデュピルマブの効果と安全性を検証した。

方法:
 LIBERTY NP SINUS-24試験およびLIBERTY NP SINUS-52試験は、多施設共同ランダム化プラセボ対照比較試験であり、重症CRSwNP患者において、通常ケアに加えてデュピルマブを追加したものである。SINUS-24試験は13ヶ国67施設、SINUS-52試験は14ヶ国117施設で実施された。適格患者は18歳以上の両側CRSwNP患者で、経鼻ステロイド薬、全身性ステロイド、鼻副鼻腔手術を適用されても症状があるものとした。
 SINUS-24試験の患者は、ランダムにデュピルマブ皮下300mgあるいはプラセボを2週ごとに24週まで投与する群にランダムに割り付けられた。SINUS-52試験の患者は、ランダムにデュピルマブ皮下300mg2週ごと52週まで、デュピアルマブ皮下300mg2週ごと24週まで投与しその後4週ごと24週間、あるいはプラセボを2週ごとに52週まで、の3群にランダムに割り付けられた。ランダム化は、スクリーニング時の喘息やNSAIDs過敏喘息(アスピリン喘息:AERD)、また外科手術歴、国によっておこなわれた。喘息合併非合併例のいずれもが組み込まれた。
 複合エンドポイントは、ベースラインから24週までの鼻ポリープスコア(NPS)変化、鼻汁あるいは鼻閉の変化、副鼻腔Lund-Mackay CTスコアとし、ITT集団で解析された。

結果:
 2016年12月5日~2017年8月3日まで、SINUS-24試験に276人(デュピルマブ群143人、プラセボ群133人)が登録された。2016年11月28日~2017年8月28日までに、SINUS-52試験に448人(デュピルマブ2週ごと群150人、デュピルマブ2週ごと→4週ごと群145人、プラセボ群153人)が登録された。全体を通して、男性が60%、女性が40%だった。平均BMIは27.93、平均鼻ポリープ罹患期間は11.01年だった。全体の63%が1回以上の鼻副鼻腔手術を受けた経験があり、3回以上受けたことがあるのは15%だった。過去2年間で全身性ステロイド投与を受けたことあったのは、全体の74%だった。59%に喘息を合併していた。
 両試験において、デュピルマブは複合エンドポイントを達成した。24週時点において、デュピルマブ治療群とプラセボ群のNPS最小二乗平均差は、SINUS-24試験で-2.06(95%信頼区間-2.43 to -1.69; p<0.0001)、SINUS-52試験で-1.80 (-2.10 to -1.51; p<0.0001)だった。鼻汁あるいは鼻閉スコアの差はSINUS-24試験で-0.89点(95%信頼区間-1.07 to -0.71; p<0.0001)、SINUS-52試験で-0.87 (95%信頼区間-1.03 to -0.71; p<0.0001)だった。Lund-Mackay CTスコアの差は、SINUS-24試験で-7.44点(95%信頼区間-8.35 to -6.53; p<0.0001)、SINUS-52試験で-5.13点(95%信頼区間-5.80 to -4.46; p<0.0001)だった。
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(文献より引用)

 もっともよくみられた副作用は、鼻咽頭炎、鼻ポリープ悪化、喘息悪化、頭痛、鼻出血、注射部位反応などだったが、プラセボ群のほうが多かった。

結論:
 重症CRSwNPの成人患者において、デュピルマブは鼻ポリープのサイズを縮小させ、副鼻腔の陰影を改善させ、症状重症度を低減させ、忍容性にも問題ない。これらの知見は、治療オプションが限られた重症CRSwNP患者に対して、通常ケアにデュピルマブを追加する医学的利益を支持するものである。


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by otowelt | 2019-10-07 00:16 | 気管支喘息・COPD

近畿中央呼吸器センター 呼吸器内科の 倉原優 と申します。医療従事者の皆様が、患者さんに幸せを還元できるようなブログでありたいと思います。原稿・執筆依頼はメールでお願いします。連絡先:krawelts@yahoo.co.jp


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