INBUILD試験:進行線維化を伴う間質性肺疾患に対するニンテダニブ

e0156318_1543237.jpg 線維化を阻害するのだから、IPF以外にも効くのでは?とブログで10年近く前にコラムを書きましたが、鼻で笑われていました。
 暴論ですが、CHPであろうと分類不能型であろうと、進行線維化があれば、使ったらいいと思っています(もちろん臨床試験を経て)。現状、これ以外に線維化を抑制する薬剤が出回っていないですし。
 INPULSIS試験では、52週間でベースラインからのFVC変化量は109.9mLの群間差があるので、本研究の全集団107.0mL、UIP様線維化パターン128.2mLというのは納得のいく数値です。

Flaherty KR, et al.
Nintedanib in Progressive Fibrosing Interstitial Lung Diseases
N Engl J Med. 2019 Sep 29. doi: 10.1056/NEJMoa1908681.


背景:
 臨床前データによれば、細胞内チロシンキナーゼ阻害剤であるニンテダニブは、進行性の肺線維症のプロセスを阻害する側面を有する。IPFに対するニンテダニブの有効性は示されてきたが、広い範囲の進行線維化を伴う肺疾患に対する有効性はよくわかっていない。

方法:
 この二重盲検プラセボ対照第3相試験は、15ヶ国で実施され、ランダムに胸部HRCTで肺容量の10%を超える領域に線維化がみられる患者を、ランダムに1:1の割合でニンテダニブ150mg1日2回あるいはプラセボに割り付けた。既存の治療によっても過去24ヶ月の間質性肺疾患(ILD)の進行がみられた患者のうち、予測努力性肺活量(FVC)が最低45%残されており、予測DLco30~80%のものを対象とした。アザチオプリン、シクロスポリン、ミコフェノール酸モフェチル、タクロリムス、リツキシマブ、シクロホスファミド、ステロイド(プレドニゾロン換算で20mg/日以上)を用いている患者は除外された。
 プライマリエンドポイントは、52週にわたって解析したFVC年間減少率である。その他、ILD患者の健康関連QOL指標として、King's Brief Interstitial Lung Disease Questionnaire (K-BILD)のベースラインからの変化を確認した。初回ILD急性増悪または死亡までの期間もみた。

※ fibrosing lung disease(進行線維化):牽引性気管支拡張症があり、蜂巣肺の有無を問わない、全体の10%を超える病変を有する網状影

方法:
 ランダム化は胸部HRCTにおける線維化パターンで層別化した(UIP様線維化パターンあるいはその他の線維化パターン)。プライマリエンドポイントは、52週にわたって解析したFVC年間減少率である。

※UIP様線維化パターン:以下のうち、A+B+CまたはA+CまたはB+Cのいずれかを満たすもの。
A 肺底部や末梢優位の蜂巣肺による構造破壊。
B 肺底部や末梢優位の線維化に合致する網状影と牽引性気管支拡張症。
C 結節や浸潤影といった非典型的所見がない。すりガラス陰影がもしあっても、網状影パターンを超えない。


結果:
 合計663人が治療された(ニンテダニブ群332人、プラセボ群331人)。それぞれ53.9%、53.5%が男性だった。平均年齢はそれぞれ65.2±9.7歳、66.3±9.8歳だった。UIP様線維化パターンを呈していたのは、それぞれ206人(62.0%)、206人(62.2%)だった。平均%FVCはそれぞれ68.7±16.0%、69.3±15.2%だった。平均%DLcoは44.4±11.9%、47.9±15.0%だった。52週間にわたって経過を観察できたのはニンテダニブ群314人、プラセボ群311人だった。両群の患者背景やベースライン時の呼吸機能(上述)、K-BILDに差はなかった。臨床診断名は、過敏性肺炎、自己免疫性ILD、NSIPなどだったが、これらの分布も群間差はなかった。
 52週時点における全体のFVCの年間減少率は、プラセボ群187.8mL/年、ニンテダニブ群80.8mL/年と、その差は107.0mLだった(95%信頼区間65.4-148.5mL, p<0.001)。UIP様パターンを示した患者(両群とも206人)でみると、FVC年間減少率は両群とも良好だったが、プラセボ群に比べてニンテダニブ群で有意に抑制されていた(82.9mL vs 211.1mL, 差:128.2mL[95%信頼区間70.8-185.6],p<0.001)。
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(文献より引用:FVC変化)

 52週時点におけるK-BILDスコアの変化量については、群間差はなく、UIP様線維化パターンを示した患者にしぼっても同様だった。
 初回のILD急性増悪(12.3% vs 17.8%)または死亡の発生(8.1% vs 11.5%)にも有意差はなかった。本研究で長期の観察データを用いて解析したところ、初回ILD急性増悪または死亡は、ニンテダニブ群で低かった(ハザード比0.68、P=0.06)。UIP様パターンの患者では、これら治療群間の乖離がさらに著明だった(ハザード比0.61、P=0.04)。
 下痢がもっともよくみられた副作用で、ニンテダニブ群の66.9%、プラセボ群の23.9%に観察された。肝機能障害はニンテダニブ群で多かった。

結論:
 進行線維化を伴うILD患者において、FVCの年間減少率はプラセボ群よりもニンテダニブ群の患者で有意に低かった。下痢がもっともよくみられた副作用だった。


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by otowelt | 2019-10-09 00:29 | びまん性肺疾患

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