IPFにおける肺結核の臨床的特徴

IPFにおける肺結核の臨床的特徴_e0156318_9552565.jpg 当院でも時に経験しますが、なかなか発見が難しいです。個人的には10~20例ほど経験したことがあり、ステロイドが継続的に入っているケースが多かったです。

Lee YH, et al.
Clinical and radiological features of pulmonary tuberculosis in patients with idiopathic pulmonary fibrosis
Respiratory Investigation, https://doi.org/10.1016/j.resinv.2019.08.001


背景:
 特発性肺線維症(IPF)患者における肺結核の放射線学的および臨床的特徴に関するデータは限られている。そのため、この研究ではIPF患者における肺結核の臨床的・放射線学的特徴を調べることを目的とした。

方法:
 韓国の慶北大学校病院において、IPF患者、非IPF患者の両集団で肺結核の臨床的・放射線学的因子を後ろ向きに比較した(2001年1月から2017年9月にIPFと診断された症例)。胸部CT所見について、IPF+結核患者と非IPF+肺非結核性抗酸菌症患者の2群で比較した。

結果:
 609人のIPF患者のうち、28人(4.6%)が肺結核と診断された。IPFの肺結核患者では、偶発的に放射線学的異常を指摘されるという経緯が最も多く、IPF診断時に半数が同定された。そのほかは、IPFの経過中に肺結核を発症することが多かった。IPF診断から肺結核発症までの期間中央値は1.5ヶ月だった。IPF診断後に肺結核と診断された13人のうち、6人(46.1%)がステロイドあるいは免疫抑制剤治療中に肺結核を発症した。
 IPFの肺結核の治療成功率は、非IPFの肺結核より有意に低かった。結核菌の薬剤感受性には、IPF-非IPF間で差はなかった。
 胸部CT写真は、IPFの肺結核患者では、非IPFの肺結核患者よりも、既存の結核病巣の再活性化の頻度が低かった。IPFの肺結核患者では、小葉中心性結節が少なく、コンソリデーション主体の陰影が多かった。IPFの肺結核患者とIPFの肺非結核性抗酸菌症患者では、画像所見は同様だった。コンソリデーションは、蜂巣肺にオーバーラップして存在することが多かった。
IPFにおける肺結核の臨床的特徴_e0156318_1363695.png
(IPFの肺結核患者と非IPFの肺結核患者の画像所見の違い:文献より引用)

結論:
 IPF患者における肺結核は、偶発的に胸部画像異常を指摘されて発見されることが多い。画像所見は通常とは異なり、アウトカムも不良である。





by otowelt | 2019-11-18 00:52 | 抗酸菌感染症

近畿中央呼吸器センター 呼吸器内科の 倉原優 と申します。医療従事者の皆様が、患者さんに幸せを還元できるようなブログでありたいと思います。原稿・執筆依頼はメールでお願いします。連絡先:krawelts@yahoo.co.jp


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