喀血に対するトラネキサム酸は院内死亡率を低下させる
2019年 11月 09日

Kinoshita T, et al.
Effect of tranexamic acid on mortality in patients with haemoptysis: a nationwide study
Critical Care 23, Article number: 347 (2019)
背景:
トラネキサム酸は喀血患者に広く使われているが、死亡率を改善させるのかどうかは検証されていない。この研究の目的は、喀血患者の院内死亡率にトラネキサム酸が与える影響を調べることである。
方法:
日本DPC入院患者データベースを用いた後ろ向き研究である。2010年7月から2017年3月の間に喀血で緊急入院した全症例を同定した。患者は、コントロール群、トラネキサム酸群(入院日に投与された症例)の2群に分けられた。プライマリアウトカムは院内死亡率で、セカンダリアウトカムは入院期間と総医療費とした。データは傾向スコアマッチを用いて評価された。
18歳未満の患者や、入院日に死亡した症例は除外された。
結果:
28539人の患者のうち、17049人がトラネキサム酸を投与され、11490人が投与されなかった。トラネキサム酸群では、95.8%の患者で2g以下の用量が用いられていた。コントロール群のうち、2997人(26.1%)は入院2日目以降にトラネキサム酸の投与を受けていた。
傾向スコア解析で、9933人ずつのマッチペアが作成された。平均年齢はトラネキサム酸群72±14歳、コントロール群72±13歳だった。約63%が男性で、約47%が非喫煙者だった。喀血の原因疾患を調べると、3人に1人は特発性で、特定できたものは、呼吸器感染症、悪性腫瘍が多かった。気管支拡張症は約15%だった。
マッチ前の粗死亡率は、トラネキサム酸群1379人(12.0%)、コントロール群1290人(7.6%) だった。マッチペアにおいて、トラネキサム酸群はコントロール群より有意に院内死亡率が低く(11.5% vs 9.0%; リスク差− 2.5%; 95%信頼区間− 3.5 to − 1.6%)、入院期間が短く(18 ± 24 日 vs 16 ± 18 日; リスク差− 2.4 日; 95%信頼区間− 3.1 to − 1.8 日)、総医療費が安かった(7573 ± 10,085ドル※ vs 6757 ± 9127ドル; リスク差− 816ドル; 95%信頼区間− 1109 to − 523ドル)。
※1ドル=110円で計算。

結論:
緊急入院を要する喀血患者に対するトラネキサム酸は、院内死亡率を減らすかもしれない。
■「呼吸器内科医」はm3を応援しています!新規登録で3,000円相当ポイント進呈!

by otowelt
| 2019-11-09 13:37
| 呼吸器その他