全身性強皮症関連肺高血圧症は、若年層で生存期間が延長しつつある

全身性強皮症関連肺高血圧症は、若年層で生存期間が延長しつつある_e0156318_9102283.jpg 現在では初期併用治療(upfront combination therapy)が標準的になってきました。DLcoが低いSSc患者さんでは、いつもPAHの存在がないか疑っています。DLcoが60%未満では、肺動脈圧が経時的に上昇していきます(Eur Respir J. 2018 Apr 4;51(4). pii: 1701197.)。

・参考記事:DETECT研究:全身性強皮症における肺高血圧症の進展

Hachulla E, et al.
Survival improved in systemic sclerosis associated pulmonary arterial hypertension patients aged 70 years or less over the period 2006-2017 in France.
Chest. 2019 Nov 19. pii: S0012-3692(19)34216-3. doi: 10.1016/j.chest.2019.10.045.


背景:
 全身性強皮症に関連した肺動脈性肺高血圧症(SSc-PAH)について、過去10年間生存の改善に進歩があったかどうかわかっていない。

方法:
 臨床的に関連するベースラインの交絡因子に合わせて調整された多変量Cox回帰モデルを使用して、同じ期間(2006年~2011年 vs 2012年~2017年)の2つを比較して、死亡の発生とPAH診断日との関連を評価した。2診断期とベースラインの共変数の交互作用が検証された。

結果:
 合計306人の患者が登録され、167人(54.6%)が2006年~2011年に、139人(45.4%)が2012年~2017年にPAHと診断された。
 2006年~2011年と比較して2012年~2017年に診断されたPAHの生存期間に有意な差は観察されなかった(ハザード比0.76、95%信頼区間0.46-1.26、p=0.29)。
 PAH診断期と年齢のあいだに有意な交互作用がみられた(p=0.05)。年齢で層別化すると、70歳以下の患者では2006年~2011年から2012年~2017年までに生存期間が有意に延長していた(ハザード比0.40、95%信頼区間0.17-0.99、p=0.046)。しかし、高齢者では有意差はなかった(ハザード比1.29、95%信頼区間0.67-2.51、p=0.44)。
 エンドセリン受容体/ホシホジエステラーゼ5阻害剤による初期併用治療(初期4ヶ月以内)を受けた頻度は、2006年~2012年と比較して2012年~2017年では若年層で高かったが、高齢者層では有意ではなかった。
全身性強皮症関連肺高血圧症は、若年層で生存期間が延長しつつある_e0156318_14103525.png
(70歳以下の生存曲線:文献より引用)

結論:
 2006年~2017年のあいだに、SSc-PAHの生存期間は70歳以下では改善していたが、高齢者では不変だった。この関連性が初期併用治療による恩恵によるものか、あるいは一般診療の質が向上したことによるものか、さらなる研究によって調べる必要がある。


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by otowelt | 2019-12-26 00:19 | 膠原病

近畿中央呼吸器センター 呼吸器内科の 倉原優 と申します。医療従事者の皆様が、患者さんに幸せを還元できるようなブログでありたいと思います。原稿・執筆依頼はメールでお願いします。連絡先:krawelts@yahoo.co.jp


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