肺胞微石症におけるSLC34A2の新規対立遺伝子多型

肺胞微石症におけるSLC34A2の新規対立遺伝子多型_e0156318_1722786.png 14年目の呼吸器内科医ですが、これまで1人しか目にしたことがありません。
 遺伝子変異により、肺胞内のリンイオンの除去が阻害され、肺胞内でカルシウムが沈着することがこの疾患の本態です。

Jönsson ÅLM, et al.
Eight novel variants in the SLC34A2 gene in pulmonary alveolar microlithiasis.
Eur Respir J. 2019 Dec 12. pii: 1900806. doi: 10.1183/13993003.00806-2019.


背景:
 肺胞微石症(PAM)は、II型肺胞上皮細胞に発現するリンの運搬タンパクをコードするSLC34A2遺伝子の変異によって起こる疾患である。PAMは肺胞にリン酸カルシウム結石が沈着することを特徴としており、肺の機能異常をもたらす。SLC34A2遺伝子変異スペクトラムはまだあまり検証されておらず、ジェノタイプ-フェノタイプの相関があるのかどうかも分かっていない。

方法:
 われわれは14人のPAM患者および4人の近親者からDNAを採取し、SLC34A2のコード領域を直接DNAシーケンスで分析した。表現型の特徴を同定すべく、臨床データが収集され、タンパク内の型・局在に基づいて、各変異の重症度スコアが作成された。

結果:
 われわれはPAM患者14人において、SLC34A2の新しい対立遺伝子変異多型を8つ同定した。これらのうち4つがナンセンス変異で、3つがミスセンス変異で、1つはスプライス部位変異だった。1人の患者は2つの異なる変異に対してヘテロ接合型で、他の患者はすべてホモ接合型だった。4人は無症状で、10人が有症状だった。疾患重症度は、変異重症度と関連していた。
肺胞微石症におけるSLC34A2の新規対立遺伝子多型_e0156318_1762573.png
(文献より引用:疾患重症度と変異重症度)

結論:
 PAMにおけるSLC34A2の重要な役割を提示した。これは、PAMの多様な疾患スペクトラムをあらわす。SLC34A2変異は全患者で同定され、8つの新しいい対立遺伝子変異多型が発見された。疾患重症度と変異重症度には関連があったが、さらに多くの患者において検証する必要がある。




by otowelt | 2020-01-30 00:31 | びまん性肺疾患

近畿中央呼吸器センター 呼吸器内科の 倉原優 と申します。医療従事者の皆様が、患者さんに幸せを還元できるようなブログでありたいと思います。原稿・執筆依頼はメールでお願いします。連絡先:krawelts@yahoo.co.jp


by 倉原優
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