メタアナリシス:世界の結核治療成功率

メタアナリシス:世界の結核治療成功率_e0156318_231239.png 研究デザインがごちゃまぜの解析ですが、アメリカの治療成功率がかなり低いですね。

Chaves Torres NM, et al.
Factors predictive of the success of tuberculosis treatment: A systematic review with meta-analysis.
PLoS One. 2019 Dec 27;14(12):e0226507.


目的:
 結核治療の世界的な結果のプール推定値を算出し、TB治療成功の予測因子を分析すること。

方法:
 肺結核の治療結果および結果に影響する因子について報告した、2014年から2019年までに出版された研究を用いた。ランダム効果モデルを用いて、オッズ比と95%信頼区間を算出した。

結果:
 合計151研究が基準を満たした。95が後ろ向きコホート研究、28が横断研究、25が前向きコホート研究、3が症例対照研究だった。成人の研究が91、小児の研究が7だった。また、HIV共感染患者を扱った研究は15で、多剤耐性結核/超多剤耐性結核の研究は15だった。
 成人における薬剤感受性結核の治療成功率は80.1%(95%信頼区間78.4-81.7%)だった。高い異質性(I2=99.8%)が観察されたが、出版バイアスはみられなかった。
 アメリカの治療成功率が最も低く、75.9%だった(95%信頼区間73.8-77.9%)。オセアニアが最も高く、83.9%(95%信頼区間75.2-91.0%)だった。
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(世界の結核治療成功率:文献より引用)

 小児では、治療成功率は84.8%(95%信頼区間77.7-90.7%)だった。HIV共感染患者の治療成功率は71.0%(95%信頼区間63.7-77.8%)で、多剤耐性結核では58.4%(95%信頼区間51.4-64.6%)、超多剤耐性結核では27.1%(95%信頼区間12.7-44.5%)だった。
 治療開始2ヶ月後の喀痰抗酸菌塗抹検査が陰性の場合、治療成功率は約3倍高かった(オッズ比2.7、95%信頼区間1.5-4.8)。また、65歳未満の若年(オッズ比2.0、95%信頼区間1.7-2.4)、非飲酒者(オッズ比2.0、95%信頼区間1.6-2.4)、HIV陰性患者(オッズ比1.9、95%信頼区間1.6-2.5)も治療成功率が高かった。

結論:
 世界的に結核の治療成功率は良好だったが、それでもなお85%を下回っている。年齢、性別、アルコール消費量、喫煙、治療開始2ヶ月目の喀痰陰性化、HIV感染症は結核の治療成功に影響を与える。
 

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by otowelt | 2020-01-20 00:28 | 抗酸菌感染症

近畿中央呼吸器センター 呼吸器内科の 倉原優 と申します。医療従事者の皆様が、患者さんに幸せを還元できるようなブログでありたいと思います。原稿・執筆依頼はメールでお願いします。連絡先:krawelts@yahoo.co.jp


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