抗ARS抗体症候群における間質性肺疾患の再発予測因子

抗ARS抗体症候群における間質性肺疾患の再発予測因子_e0156318_15151144.png 公立陶生病院からの報告です。実臨床で抱く印象と同様だと思います。CHPの論文に続いて、すごいですね。

Takei R, et al.
Predictive factors for the recurrence of anti-aminoacyl-tRNA synthetase antibody-associated interstitial lung disease.
Respir Investig. 2019 Dec 5. pii: S2212-5345(19)30128-5.


背景:
 抗ARS抗体症候群は、アミノアシルtRNA合成酵素に対する抗体を有し、間質性肺疾患(ILD)をしばしば繰り返す。ステロイドとカルシニューリン阻害剤(CNI)による寛解導入の効果とILD再発の予測因子の間の関連を調べた。

方法:
 われわれは、後ろ向きに2006年~2017年にステロイドとCNIで治療された抗ARS抗体症候群-ILDの症例を抽出し、ロジスティック回帰分析を用いて再発の予測因子を評価した。

結果:
 研究には57人が登録され、54人(94.7%)が寛解導入療法による改善がみられた(改善までの中央期間:3ヶ月[IQR 1-4])。維持治療中に32人にILD再発が確認された。再発までの中央期間は27ヶ月だった。ILD再発例・非再発例のあいだにベースラインの患者特性の差はなかった。
 ILD再発群において、呼吸機能とSGRQスコアの経時的悪化がみられた。disease behaviorとともに血清KL-6も変化した。ベースラインの血清KL-6が500U/mL未満だったのは33人(62.2%)で1000U/mL未満だったのは48人(90.5%)。ILD再発群では、KL-6は中央値で1045U/mL(IQR 637-1653)に上昇したが、非再発群では最終観察のKL-6中央値は562U/mL(IQR 342-759)だった。
 多変量解析によると、寛解からの血清KL-6上昇(オッズ比3.21、95%信頼区間1.17-8.86、p=0.02)、CNI中断(オッズ比8.09、95%信頼区間1.39-47.09、p=0.02)は再発の独立リスク因子であった。ROC分析では、血清KL-6の妥当な上昇カットオフ値は2.0倍だった。寛解からの血清KL-6上昇が2倍を超える場合の陽性的中率は90.0%、CNI中断の陽性的中率は88.9%だった。CNI治療期間と再発には関連はなかった。
抗ARS抗体症候群における間質性肺疾患の再発予測因子_e0156318_15454072.png
(単変量・多変量解析:文献より引用)

結論:
 抗ARS抗体症候群のILD再発は、長期的な悪化に影響する。血清KL-6は、disease behaviorと再発予測に有用なバイオマーカーである。また、CNIの継続が重要であることが支持される。


by otowelt | 2020-01-12 00:00 | びまん性肺疾患

近畿中央呼吸器センター 呼吸器内科の 倉原優 と申します。医療従事者の皆様が、患者さんに幸せを還元できるようなブログでありたいと思います。原稿・執筆依頼はメールでお願いします。連絡先:krawelts@yahoo.co.jp


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