肺MAC症におけるクラリスロマイシン単独治療の頻度:9.2%

肺MAC症におけるクラリスロマイシン単独治療の頻度:9.2%_e0156318_17465259.png 確か1年ほどまえに似たデータを見たことがあるのですが(EBが入っていないCAMに関する類似の論文でした)、これだけ有名になっても、まだ10人に1人の医師がCAM単独治療を適用していることに驚きました

Iwao T, et al.
A survey of clarithromycin monotherapy and long-term administration of ethambutol for patients with MAC lung disease in Japan: A retrospective cohort study using the database of health insurance claims.
Pharmacoepidemiol Drug Saf. 2019 Dec 25. doi: 10.1002/pds.4951.


背景:
 近年、非結核性抗酸菌症(NTM)の患者数は指数関数的に増加している。日本では、NTM患者の約88.8%が肺MAC症に罹患している。肺MAC症の発生は、特に中高年の女性の間で増加している。肺MAC症の標準治療は化学療法である。薬剤耐性菌の発生を防ぐために専門家が推奨する化学療法の種類は、クラリスロマイシン(CAM)、リファンピシン、エタンブトール(EB)の組み合わせである。
 CAM単独療法は、肺MAC症患者に薬剤耐性菌を誘発する可能性が高いため、専門家からは禁忌であると警告されている。さらに、薬物の有害事象を避けるため、1000 mg/日以上の用量でEBを投与することも推奨されていない。
 しかし、実際の臨床現場でそのような治療症例がどれだけ存在するかは不明である。これは、長期的な調査が実施されていないことが原因である。

方法:
 この研究では、健康保険請求データベースに基づいて肺MAC症患者1135人を調査することによって、2005年から2017年までこれらの薬剤による治療について調査した。

結果:
 約9.2%(101人)が3ヶ月以上の長期CAM単独治療を受けていた。最低用量は200mg/日、最高用量は1200mg/日だった。
 また、約3.6%(18人)が高用量EBを処方されていた。

結論:
 長期にわたるCAM単独療法は、一部の患者にとって潜在的に有害である。治療の種類とその潜在的な悪影響について知ることが、臨床医にとって有益である。





by otowelt | 2020-03-28 00:31 | 抗酸菌感染症

近畿中央呼吸器センター 呼吸器内科の 倉原優 と申します。医療従事者の皆様が、患者さんに幸せを還元できるようなブログでありたいと思います。原稿・執筆依頼はメールでお願いします。連絡先:krawelts@yahoo.co.jp


by 倉原優
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