LTBIにおける4Rは9Hより重症肝障害が少なく治療完遂率が高い
2020年 03月 20日
リファンピシン耐性の影響を懸念し、学会は4Rを第一には据えていません。
以下、引用です。「RFP単剤 4 カ月療法の効果はINH 6 カ月と違いがなく,肝機能障害の出現が少ない点では有利である。また,これまでの報告からRFP単剤治療後のRFP耐性化の危険は高くないと想定されるが,日本においては,INH内服例での耐性化はまれならず見られており,外国におけるRFP耐性化例では不規則内服が疑われており,服薬遵守の確保の必要がある。RFP内服例での耐性化はINH耐性化より治療が困難である。RFP耐性化例がINH耐性化例と同じようにまれならず起こるかどうかはまだわかっていないが,起こりうる耐性化を予防する方法として,LTBI治療前の発病除外のためにCT検査を行うことに意味があるかもしれない。しかし,CT検査に伴う被曝によって悪性腫瘍発生のリスクが増加する懸念があることを考慮すると,CT検査をLTBI治療にあたって一律に行うことは妥当ではないと考える。以上より,RFP単剤使用後のRFP耐性化結核の発病の危険がきわめて低いという証拠が得られるまでは,薬剤耐性およびINHに伴う副作用の危険が高くINHが使えないまたは使いにくい場合に限って,活動性結核の除外と服薬遵守の確保を前提に適用を認めることを提案する。」(潜在性結核感染症治療レジメンの見直し[Kekkaku Vol. 94, No. 10 : 515-518, 2019]より)
Lisa A. Ronald, et al.
Treatment with Isoniazid or Rifampin for Latent Tuberculosis Infection: Population-Based Study of Hepatotoxicity, Completion, and Costs.
European Respiratory Journal 2020; DOI: 10.1183/13993003.02048-2019
背景:
臨床試験では、潜在性結核感染症(LTBI)に対する4ヶ月のリファンピシン(4R)は、9ヶ月のイソニアジド(9H)と比較して肝障害が少なくやアドヒアランスが良好であることが示されている。われわれの目的は、カナダのケベック州の一般集団におけるLTBI治療において、4Rレジメンと9Hレジメンの重症肝障害イベント・治療完遂・医療費を比較することである。
方法:
2003年~2007年にリファンピシンあるいはイソニアジドでLTBI治療を行われた後ろ向きコホートである。入院診療録から肝障害について、地域薬剤記録から治療完遂について、請求記録などから費用を調べた。年齢、併存症、その他交絡因子で補正して、リファンピシンとイソニアジドを比較した。
結果:
LTBI治療を受けた10559人が登録された(イソニアジド9684人、リファンピシン875人)。リファンピシンで治療を受けた患者は、ベースラインに併存症がある高齢者が多かった。重症肝障害(入院と治療中断を要する肝障害と定義)のリスクは、リファンピシンよりもイソニアジドのほうが多かった(補正オッズ比2.3、95%信頼区間0.3-16.1)。そのうち2人が肝移植を受け、1人が死亡した。これらは、いずれもイソニアジド群だった。併存症がない患者では、肝障害リスクは低かった(0.1% vs 1.0%)。4R完遂(53.5%)は9H完遂(36.9%)より多かった(補正リスク比1.5、95%信頼区間1.3-1.7)。平均医療費はリファンピシンのほうがイソニアジドより安かった(補正コスト比0.7、95%信頼区間0.5-0.9)。
結論:
年齢と併存症で補正すると、9Hと比較して4Rのほうが、重症肝障害のリスクと医療費が低く、治療完遂率が高かった。9Hによって重症肝障害の3人は死亡や肝移植の転帰をたどったが、4Rにはそういった症例はなかった。
以下、引用です。「RFP単剤 4 カ月療法の効果はINH 6 カ月と違いがなく,肝機能障害の出現が少ない点では有利である。また,これまでの報告からRFP単剤治療後のRFP耐性化の危険は高くないと想定されるが,日本においては,INH内服例での耐性化はまれならず見られており,外国におけるRFP耐性化例では不規則内服が疑われており,服薬遵守の確保の必要がある。RFP内服例での耐性化はINH耐性化より治療が困難である。RFP耐性化例がINH耐性化例と同じようにまれならず起こるかどうかはまだわかっていないが,起こりうる耐性化を予防する方法として,LTBI治療前の発病除外のためにCT検査を行うことに意味があるかもしれない。しかし,CT検査に伴う被曝によって悪性腫瘍発生のリスクが増加する懸念があることを考慮すると,CT検査をLTBI治療にあたって一律に行うことは妥当ではないと考える。以上より,RFP単剤使用後のRFP耐性化結核の発病の危険がきわめて低いという証拠が得られるまでは,薬剤耐性およびINHに伴う副作用の危険が高くINHが使えないまたは使いにくい場合に限って,活動性結核の除外と服薬遵守の確保を前提に適用を認めることを提案する。」(潜在性結核感染症治療レジメンの見直し[Kekkaku Vol. 94, No. 10 : 515-518, 2019]より)
Lisa A. Ronald, et al.
Treatment with Isoniazid or Rifampin for Latent Tuberculosis Infection: Population-Based Study of Hepatotoxicity, Completion, and Costs.
European Respiratory Journal 2020; DOI: 10.1183/13993003.02048-2019
背景:
臨床試験では、潜在性結核感染症(LTBI)に対する4ヶ月のリファンピシン(4R)は、9ヶ月のイソニアジド(9H)と比較して肝障害が少なくやアドヒアランスが良好であることが示されている。われわれの目的は、カナダのケベック州の一般集団におけるLTBI治療において、4Rレジメンと9Hレジメンの重症肝障害イベント・治療完遂・医療費を比較することである。
方法:
2003年~2007年にリファンピシンあるいはイソニアジドでLTBI治療を行われた後ろ向きコホートである。入院診療録から肝障害について、地域薬剤記録から治療完遂について、請求記録などから費用を調べた。年齢、併存症、その他交絡因子で補正して、リファンピシンとイソニアジドを比較した。
結果:
LTBI治療を受けた10559人が登録された(イソニアジド9684人、リファンピシン875人)。リファンピシンで治療を受けた患者は、ベースラインに併存症がある高齢者が多かった。重症肝障害(入院と治療中断を要する肝障害と定義)のリスクは、リファンピシンよりもイソニアジドのほうが多かった(補正オッズ比2.3、95%信頼区間0.3-16.1)。そのうち2人が肝移植を受け、1人が死亡した。これらは、いずれもイソニアジド群だった。併存症がない患者では、肝障害リスクは低かった(0.1% vs 1.0%)。4R完遂(53.5%)は9H完遂(36.9%)より多かった(補正リスク比1.5、95%信頼区間1.3-1.7)。平均医療費はリファンピシンのほうがイソニアジドより安かった(補正コスト比0.7、95%信頼区間0.5-0.9)。
結論:
年齢と併存症で補正すると、9Hと比較して4Rのほうが、重症肝障害のリスクと医療費が低く、治療完遂率が高かった。9Hによって重症肝障害の3人は死亡や肝移植の転帰をたどったが、4Rにはそういった症例はなかった。
by otowelt
| 2020-03-20 00:53
| 抗酸菌感染症