2019-nCoV肺炎138例の後ろ向き検討

2019-nCoV肺炎138例の後ろ向き検討_e0156318_9124233.png 2019-nCoV関係の論文はだいたい目を通しているのですが、138例と規模の大きな報告が出たため、ブログでも紹介させていただこうと思います。
 全体の死亡率が4.3%で、138例のうちの16%がARDSにいたっている集団であることから、日本でこれから診ることになる臨床像とは少し異なるかもしれません。
 現状、ICU入室リスクが高いのは、呼吸困難や食思不振を訴えている高齢・基礎疾患のある患者さんのようです。
 
Wang D, et al.
Clinical Characteristics of 138 Hospitalized Patients With 2019 Novel Coronavirus–Infected Pneumonia in Wuhan, China.
JAMA. 2020 Feb 7


背景:
 2019年12月に、新型コロナウイルス(2019-nCoV)による肺炎(NCIP)が中国武漢で発生した。多くの人へ感染しているが、感染者の臨床的特徴の情報は限られている。

目的:
 NCIPの疫学的、臨床的特徴を記述すること。

概要:
 2020年1月1日から1月28日まで武漢大学中南医院に入院したNCIPの連続患者138人の後ろ向き単施設報告である。最終データ追跡は2020年2月3日である。

主要アウトカム:
 疫学、背景、臨床、検査、画像、治療データが収集され、解析された。重症患者と非重症患者が比較された。同病棟の医療従事者や入院患者が集団感染し、疫学的リンクを追跡できる場合、病院関連の伝播が疑われた。

結果:
 NCIPの入院患者138人の年齢中央値は56歳(IQR 42-68歳、範囲22-92歳)で、75人(54.3%)が男性だった。病院関連の伝播は、医療従事者40人(29%)、入院患者17人(12.3%)だった。
 よくみられる症状は、発熱(136人[98.6%])、疲労(96人[69.6%])、乾性咳嗽(82人[59.4%])である。咽頭痛は 24人 (17.4%)、下痢は14人(10.1%)にみられた。
 リンパ球減少(リンパ球数中央値0.8 × 109/L [IQR 0.6-1.1])が97人(70.3%)に、PT延長(中央値13.0秒[IQR 12.3-13.7])が80人(58%)に、LDH上昇(中央値261 U/L [IQR 182-403])が55人(39.9%)にみられた。
 胸部CTでは、両肺の斑状影あるいはすりガラス陰影が全例でみられた。
 ほとんどの患者は抗ウイルス治療(オセルタミビル124人[89.9%])を受け、多くの患者が抗菌薬を投与された(モキシフロキサシン89人[64.4%]、セフトリアキソン34人[24.6%]、アジスロマイシン25人[18.1%])。全身性ステロイド治療は62人(44.9%)が受けていた。
 36人(26.1%)が合併症のためICU入室を余儀なくされた。そのうちARDSは22人(61.1%)、不整脈は16人(44.4%)、ショックは11人(30.6%)だった。
 初発症状から呼吸困難の発症までの期間の中央値は5.0日で、入院までの期間の中央値は7.0日、ARDSまでの期間の中央値は8.0日だった。ICUで治療された患者(36人)とICU外で治療された患者(102人)を比較すると、ICU患者は高齢で(年齢中央値66歳 vs 51歳)、基礎疾患を有する頻度が高く(26人 [72.2%] vs 38人 [37.3%])、呼吸困難(23人 [63.9%] vs 20人 [19.6%])や食思不振(24人 [66.7%] vs 31人 [30.4%])が多かった。
2019-nCoV肺炎138例の後ろ向き検討_e0156318_952206.png
(基礎疾患と症状:文献より引用)

 ICUで治療された36人のうち4人(11.1%)がハイフロー酸素療法を受け、15人(41.7%)が非侵襲性換気を受け、17人(47.2%)が挿管・人工呼吸管理を受けた(このうち4人がECMOへスイッチ)。APACHE IIは中央値 17(IQR 10-22)、SOFAは中央値5 (3-6)だった。
 2020年2月3日時点で、48人(34.1%)が退院し、6人(4.3%)が死亡したが、残りの患者は現在も入院中である。生存して退院した47人の入院期間中央値は10日(IQR 7.0-14.0)だった。
2019-nCoV肺炎138例の後ろ向き検討_e0156318_9261318.png
(治療:文献より引用)

結論:
 中国武漢におけるNCIP138人の単施設報告で、病院関連の2019-nCoVの伝播が患者41%に疑われ、患者の26%がICUでのケアを受け、死亡率は4.3%だった。




by otowelt | 2020-02-08 09:26 | 感染症全般

近畿中央呼吸器センター 呼吸器内科の 倉原優 と申します。医療従事者の皆様が、患者さんに幸せを還元できるようなブログでありたいと思います。原稿・執筆依頼はメールでお願いします。連絡先:krawelts@yahoo.co.jp


by 倉原優
カレンダー