COVID-19:China CDCによる72314人の解析結果
2020年 02月 18日

※2020年2月24日 JAMAに掲載されました。
Zunyou Wu, et al.
Characteristics of and Important Lessons From the Coronavirus Disease 2019 (COVID-19) Outbreak in China
Summary of a Report of 72314 Cases From the Chinese Center for Disease Control and Prevention
JAMA. Published online February 24, 2020. doi:10.1001/jama.2020.2648
背景:
中国湖北省武漢におけるCOVID-19のアウトブレイクは、世界的に流行した。そこで、われわれは2020年2月11日時点で診断された症例の記述的・探索的解析結果を報告する。
方法:
2020年2月11日までにCOVID-19と診断された全症例をChina’s Infectious Disease Information Systemから抽出した。解析には以下のものが含まれた。①患者特性、②年齢分布、性差、③致死率および死亡率の計算、④ウイルスの広がりの地理的時間的分析、⑤流行曲線(エピカーブ)、⑥サブグループ解析。
重症度は、軽症、中等症、重症に分類された。軽症は、肺炎がないか軽度であるものとした。中等症は、呼吸困難、呼吸数≧30回/分、酸素飽和度≦93%、P/F比<300、24~48時間以内の肺の浸潤影>50%とした。重症は、呼吸不全、敗血症性ショック、多臓器機能障害/不全とした。
結果:
分析のために提供されたデータに基づくと、合計72314人の患者記録のうち、44672人(61.8%)が確定例、16186人(22.4%)が疑い例、10567人(14.6%)(湖北省のみ)が臨床診断例、889人(1.2%)が無症候例だった。確定例のうち、ほとんどが30~79歳(86.6%)であり、湖北省で診断されたのが74.7%、軽症例が80.9%だった。確定例では合計1023人の死亡があり、致死率は2.3%だった。9歳以下では死亡例はなかった。70~79歳での致死率は8.0%、80歳以上での致死率は14.8%だった。軽症または中等症での死亡例はなく、重症例での致死率は49.0%だった。致死率は基礎疾患のある患者で高かった。


(患者背景:文献より引用)
2019年12月以降、COVID-19は湖北省の外へ広がっており、2020年2月11日までに31省1386郡に影響を及ぼしている。流行曲線のピークは1月23日~26日あたりにあり、2月11日時点ではすでに減少に転じている。

合計1716人の医療従事者が感染し、武漢では1080人が感染した。医療従事者の感染例のうち、武漢では17.7%、湖北省では10.4%が中等症あるいは重症だった。5人(0.3%)が死亡した。
SARS・MERSとの比較:(JAMA論文化後に追記)
SARSやMERSと比較すると共通点と相違点がある。共通点として動物由来であることが挙げられる。SARSは動物に由来する新型のコロナウイルスで中国広東省の市場から発生した。MERSも同様に動物(コウモリ→ラクダ)に由来してサウジアラビアで発生した新型のコロナウイルスであった。SARS、MERS、COVID-19はいずれも発熱、咳嗽などを主症状とした下気道感染を発症し、高齢者や基礎疾患のある患者で重症になる。特異的な治療法は見出されていない現状がある。相違点として、SARSは29ヶ国8096人に感染し774人が死亡した(致死率9.6%)。MERSは2494人の感染のうち858人が死亡した(致死率34.4%)。COVID-19は致死率は低いが、感染者が多いために死亡数が増大した。COVID-19の致死率は母数の問題がある。すなわち、全感染者が診断されていない可能性がある。湖北省での死亡率2.9%であるものの、それ以外の地域では0.4%と乖離が生じている。また、SARSやMERSでは多くの二次感染は病院内で発生した。COVID-19でも病院内での感染は散発的に発生したものの、全体としての影響は軽微である。湖北省以外での20省では1183のクラスターが報告されており、それぞれのクラスターは2~4人と少数だった(88%)。クラスターの64%は家族内クラスターである。基本再生産数はまだはっきりとしていないが、SARSやMERSよりは感染伝播が速やかである。
結論:
COVID-19エピデミックは、湖北省から中国本土全体へ30日以内ですみやかに拡大した。多くの人々が長期休暇から戻ってきたため、中国は流行のリバウンドに備える必要がある。
by otowelt
| 2020-02-18 07:57
| 感染症全般