COVID-19:好酸球減少がSARS-CoV-2陽性診断に寄与?

COVID-19:好酸球減少がSARS-CoV-2陽性診断に寄与?_e0156318_2252711.png プレプリントばかりですいません。役に立つレベルと言えるのだろうか。

Qilin Li, et al.
A simple laboratory parameter facilitates early identification of COVID-19 patients.
medRxiv preprint doi: https://doi.org/10.1101/2020.02.13.20022830


背景:
 2020年2月11日までに、中国全土でSARS-CoV-2感染症と確定された患者数は4万人を超えて、いまだ増加し続けている。このアウトブレイクは、現在24ヶ国におよぶ。アウトブレイクのすぐ後に、発熱やその他呼吸器症状を伴う多数の患者が殺到し、CT検査および確定のためのPCR検査に待ち時間が生じた。結果、医師は検疫または治療上の決定について迅速な診断がくだせなかった。SARS-CoV-2患者のCT検査とPCR検査を優先すべき患者の同定には実用的バイオマーカーがあればよい。COVID-19の中国国家衛生委員会ガイドラインでは、白血球の減少、リンパ球の減少という2項目が推奨されている。ここでは、好酸球減少の有用性を提示する。

方法:
 これは、2020年2月3日~2月7日までに武漢の発熱外来を受診した初診患者105人について解析した後ろ向き研究である。SARS-CoV-2の陽性・陰性とともに、臨床・検査所見を記録した。

結果:
 SARS-CoV-2陰性(SN)患者(53人)およびSARS-CoV-2陽性(SP)患者(52人)が登録された。両群の差は、単変量および多変量解析された。
 両郡で性差はなかった。SP患者(平均年齢57歳)は、SN患者(平均年齢51歳、p = 0.015)よりも高齢だった。また、SN患者は他の呼吸器病原体感染率が高かった(34% vs 9.6%、p =0.005)。臨床症状については群間差はなかった。
 ガイドラインで疑わしい患者を定義するために使用された、白血球およびリンパ球の減少についてはSN患者とSP患者で有意差はなかった。興味深いことに、大部分のSP患者(78.8%)で好酸球減少症(<20/μL)が観察されたが、SN患者では35.8%にとどまった(p <0.001)。
 白血球・リンパ球を用いるよりも、好酸球を判断材料に用いることで、感度・特異度が良好になった。
COVID-19:好酸球減少がSARS-CoV-2陽性診断に寄与?_e0156318_15102339.png
(文献:COVID-19の血算の感度・特異度:文献より引用)

結論:
 好酸球減少を発熱および呼吸器症状と組み合わせることで、発熱外来でのトリアージに役立つかもしれない。




by otowelt | 2020-02-18 15:15 | 感染症全般

近畿中央呼吸器センター 呼吸器内科の 倉原優 と申します。医療従事者の皆様が、患者さんに幸せを還元できるようなブログでありたいと思います。原稿・執筆依頼はメールでお願いします。連絡先:krawelts@yahoo.co.jp


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