COVID-19:家族内クラスターから考察した無症候性キャリアからのSARS-CoV-2伝播
2020年 02月 22日
1つの家族内クラスターから考察した、無症候性キャリアからの伝播について、JAMAの報告です。
確かにこの推理が一番可能性が高そうですが、患者6が発生源の可能性もあると思います。
Yan Bai, et al.
Presumed Asymptomatic Carrier Transmission of COVID-19
JAMA. Published online February 21, 2020. doi:10.1001/jama.2020.2565
背景:
SARS-CoV-2は中国武漢からアウトブレイクしたウイルス性肺炎の原因微生物である。ヒトヒト感染が報告されているが、われわれの知る限り、胸部CTが正常のSARS-CoV-2無症候性キャリアからの伝播については報告がない。
方法:
2020年1月、河南省安陽市の第五人民病院に入院した発熱と呼吸器症状を訴える5人と1人の無症候性の家族内クラスターを登録した。全患者は胸部CTを撮影された。鼻咽頭スワブによるリアルタイムRT-PCRが検査された。
結果:
無症候性キャリアの患者1は20歳女性で、武漢在住だが2020年1月10日河南省安陽市に旅行した。1月10日、彼女は親族である患者2、患者3と接触した。1月13日、彼女は5人の親族(患者2~6)に同行して、安養市の別の入院親族の見舞いに行った。ちなみにその病院ではCOVID-19の症例はいなかった。患者1の親族が発症し、彼女は隔離および観察下に置かれた。2月11日時点で、彼女は体温の上昇もなければ、自己申告での発熱や消化器症状、咳嗽・咽頭痛などの呼吸器症状もみっられず、主治医もこれを認知していない。胸部CTが1月27日、31日に撮影されたが、異常なかった。彼女の末梢血のCRPとリンパ球は正常だった。RT-PCRは1月26日に陰性だったが、1月28日に陽性となり、2月5日・8日は陰性だった。
患者2~6は全員COVID-19を発症した。4人は女性で、年齢は42~57歳だった。これら親族の誰一人として武漢渡航歴はなく、また渡航者との濃厚接触歴もなかった(患者1を除く)。
患者2~5は、1月23日~1月26日に発熱と呼吸器症状を訴え、同日入院となった。全例初日のRT-PCRでCOVID-19と診断された。患者6は1月17日に発熱と咽頭痛を訴え、地域のクリニックを受診したが、COVID-19の診断はくだされず、数日かけて軽快した。しかしその後1月24日に再度増悪し、1月26日にCOVID-19の診断で入院した。
発症者は、胸部CTにおいて全員多発性GGOが観察され、1人は亜区域性の浸潤影と線維化を伴っていた。有症状者は末梢血のCRPが上昇しており、リンパ球が減少していた。 (概要:文献より引用)
ディスカッション:
まとめると、中国安陽市でみられたCOVID-19肺炎患者5人を含む家族内クラスターは、その発症前に武漢中心部から旅行してきた無症候性の家族1人と接触していた。これらの連続イベントから分かることは、コロナウイルスは無症候性キャリアから伝播するということである。
患者1の潜伏期間は19日であり、過去の報告の0~24日のレンジの中の長い位置にある。彼女の初回RT-PCRは陰性だった。この検査には偽陰性があるが、基本的には偽陽性は考慮されない。ゆえに、2回目のRT-PCR結果は偽陽性とは考えにくく、家族内クラスターにおけるCOVID-19のコロナウイルスと考えるのが自然だろう。
過去に10歳の小児が無症候性COVID-19感染症を有していたことが報告されているが、胸部CTでは異常がみられている(Lancet. 2020;395(10223):514-523.)。無症候性キャリアによる感染が推定される、本報告のような事案が再度起こるならば、COVID-19のヒトヒト感染を予防することは難しくなる。無症候性キャリアがCOVID-19の原因となるコロナウイルスを獲得および伝播させるメカニズムについては、さらなる研究が必要である。
確かにこの推理が一番可能性が高そうですが、患者6が発生源の可能性もあると思います。
Yan Bai, et al.
Presumed Asymptomatic Carrier Transmission of COVID-19
JAMA. Published online February 21, 2020. doi:10.1001/jama.2020.2565
背景:
SARS-CoV-2は中国武漢からアウトブレイクしたウイルス性肺炎の原因微生物である。ヒトヒト感染が報告されているが、われわれの知る限り、胸部CTが正常のSARS-CoV-2無症候性キャリアからの伝播については報告がない。
方法:
2020年1月、河南省安陽市の第五人民病院に入院した発熱と呼吸器症状を訴える5人と1人の無症候性の家族内クラスターを登録した。全患者は胸部CTを撮影された。鼻咽頭スワブによるリアルタイムRT-PCRが検査された。
結果:
無症候性キャリアの患者1は20歳女性で、武漢在住だが2020年1月10日河南省安陽市に旅行した。1月10日、彼女は親族である患者2、患者3と接触した。1月13日、彼女は5人の親族(患者2~6)に同行して、安養市の別の入院親族の見舞いに行った。ちなみにその病院ではCOVID-19の症例はいなかった。患者1の親族が発症し、彼女は隔離および観察下に置かれた。2月11日時点で、彼女は体温の上昇もなければ、自己申告での発熱や消化器症状、咳嗽・咽頭痛などの呼吸器症状もみっられず、主治医もこれを認知していない。胸部CTが1月27日、31日に撮影されたが、異常なかった。彼女の末梢血のCRPとリンパ球は正常だった。RT-PCRは1月26日に陰性だったが、1月28日に陽性となり、2月5日・8日は陰性だった。
患者2~6は全員COVID-19を発症した。4人は女性で、年齢は42~57歳だった。これら親族の誰一人として武漢渡航歴はなく、また渡航者との濃厚接触歴もなかった(患者1を除く)。
患者2~5は、1月23日~1月26日に発熱と呼吸器症状を訴え、同日入院となった。全例初日のRT-PCRでCOVID-19と診断された。患者6は1月17日に発熱と咽頭痛を訴え、地域のクリニックを受診したが、COVID-19の診断はくだされず、数日かけて軽快した。しかしその後1月24日に再度増悪し、1月26日にCOVID-19の診断で入院した。
発症者は、胸部CTにおいて全員多発性GGOが観察され、1人は亜区域性の浸潤影と線維化を伴っていた。有症状者は末梢血のCRPが上昇しており、リンパ球が減少していた。
ディスカッション:
まとめると、中国安陽市でみられたCOVID-19肺炎患者5人を含む家族内クラスターは、その発症前に武漢中心部から旅行してきた無症候性の家族1人と接触していた。これらの連続イベントから分かることは、コロナウイルスは無症候性キャリアから伝播するということである。
患者1の潜伏期間は19日であり、過去の報告の0~24日のレンジの中の長い位置にある。彼女の初回RT-PCRは陰性だった。この検査には偽陰性があるが、基本的には偽陽性は考慮されない。ゆえに、2回目のRT-PCR結果は偽陽性とは考えにくく、家族内クラスターにおけるCOVID-19のコロナウイルスと考えるのが自然だろう。
過去に10歳の小児が無症候性COVID-19感染症を有していたことが報告されているが、胸部CTでは異常がみられている(Lancet. 2020;395(10223):514-523.)。無症候性キャリアによる感染が推定される、本報告のような事案が再度起こるならば、COVID-19のヒトヒト感染を予防することは難しくなる。無症候性キャリアがCOVID-19の原因となるコロナウイルスを獲得および伝播させるメカニズムについては、さらなる研究が必要である。
by otowelt
| 2020-02-22 10:18
| 感染症全般