COVID-19:ARDS 53例の検討

COVID-19:ARDS 53例の検討_e0156318_822360.png 全体の半数がARDSになるって、どういう集団をみているんですかね・・・。入院が必要で、ある程度重症例の管理ができるエリア内、ということでしょうか。
 IDATENのメーリングリストで、ネーザルハイフローやNPPVについては避けたほうがよく、もし装着するにしてもフルPPEで対応すべきとの見解が提示されていました。

Yanli Liu, et al.
Clinical features and progression of acute respiratory distress syndrome in coronavirus disease 2019
medRxiv preprint doi: https://doi.org/10.1101/2020.02.17.20024166.


背景:
 SARS-CoV-2感染のアウトブレイクは、COVID-19を世界中に広めた。われわれは、ARDSと診断されたCOVID-19患者の臨床的特徴を報告する。ARDSはベルリン基準を用いた。

方法:
 2020年1月2日~2月1日までに武漢中心医院に入院したCOVID-19患者109人を登録した。患者は2月12日まで追跡された。電子カルテから臨床データを収集した。治療、ARDS進展、またその重症度について調べた。

結果:
 109人の年齢中央値は55歳(IQR 43-66歳、範囲22-94歳)で、59人が男性だった。よくみられた症状は発熱(82.6%)、乾性咳嗽(61.5%)、倦怠感(56.9%)だった。全体の追跡期間中央値は15日(範囲4-30日)である。
 109人のうち、91.7%に両肺の陰影がみられ、28人(25.7%)がネーザルハイフロー治療を受け、31人(28.4%)が死亡し、78人(71.6%)が生存退院した。
 全患者のうち53人(48.6%)がARDSに進展した。非ARDSと比較すると、ARDS患者は高齢(平均年齢61歳 vs 49歳)で、基礎疾患を有している頻度が高かった(糖尿病20.8% vs 1.8%、脳血管疾患11.3% vs 0%、慢性腎臓病15.1% vs 3.6%)。非ARDS群の死亡率は8.9%だったが、ARDS群の死亡率は49.1%と高かった。また、軽症ARDS患者と比較すると、中等症~重症ARDSの死亡率は高かった。
COVID-19:ARDS 53例の検討_e0156318_12203339.png
(文献より引用)
 抗ウイルス薬、全身性ステロイド、免疫グロブリン治療はARDS患者の生存に寄与しなかった。
COVID-19:ARDS 53例の検討_e0156318_12255235.png
(全身性ステロイド治療:文献より引用)

結論:
 COVID-19の死亡率はARDS重症度に応じて上昇する。現行の治療は、これらの患者の生存に寄与するまでにはいたらなかった。





by otowelt | 2020-02-23 12:26 | 感染症全般

近畿中央呼吸器センター 呼吸器内科の 倉原優 と申します。医療従事者の皆様が、患者さんに幸せを還元できるようなブログでありたいと思います。原稿・執筆依頼はメールでお願いします。連絡先:krawelts@yahoo.co.jp


by 倉原優
カレンダー