COVID-19:ロピナビル/リトナビル、ウミフェノビルに症状軽減・ウイルス陰性化の効果みられず

COVID-19:ロピナビル/リトナビル、ウミフェノビルに症状軽減・ウイルス陰性化の効果みられず_e0156318_822360.png カレトラはかなり期待されている薬剤の1つですが、本研究では有意差がついていません。

Chen Jun, et al.
Efficacies of lopinavir/ritonavir and abidol in the treatment of novel coronavirus pneumonia
Chin J Infect Dis, 2020,38(00): E008-E008.


目的:
 新型コロナウイルス肺炎(NCP)に対するロピナビル/リトナビルおよびウミフェノビル(arbidol・abidol)の効果を評価すること。

方法:
 2020年1月20日~2020年2月6日までに、上海公共衛生臨床中心においてNCPに対して治療を受けた134人を後ろ向きに登録した。全例インターフェロンα2b吸入治療と対症療法を受けた。52人がロピナビル/リトナビル5日間、34人がウミフェノビル5日間、残り48人は抗ウイルス治療を受けなかった(コントロール群)。3群の7日目における効果を比較した。2日連続で治療を受けなかった患者は、治療を受けていないものとみなされ、解析上はコントロール群に入れた。

結果:
 134人のうち69人(51.5%)が男性だった。年齢範囲は35-62歳で、平均年齢は48歳だった。抗ウイルス薬を使用していないコントロール群に重篤例が1人、ウミフェノビル群に重篤例が2人いた。基礎疾患を有していたのは、ロピナビル/リトナビル群15人(28.8%)、7人(20.6%)、 8人(16.7%)だった(p=0.33)。
 体温正常化までの期間中央値は、ウミフェノビルあるいはロピナビル/リトナビルが入院後6日、コントロール群は入院後4日だった(有意差なし、p=0.31)。呼吸器検体のPCR陰性化までの期間中央値は、3群ともに入院後7日だった。7日目のPCR陰性化率は、ロピナビル/リトナビル71.8%(39人中28人)、ウミフェノビル82.6%(23人中19人)、コントロール群77.1%(35人中27人)だった(p=0.79)。
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※上から、ロピナビル/リトナビル、ウミフェノビル、抗ウイルス薬併用なし(コントロール)
(呼吸器検体の陽性率:文献より引用)

 両肺に陰影がみられていたのはそれぞれ、42人(80.7%)、 28人(82.4%)、 42人(87.5%)だった。7日目の放射線学的所見の悪化は、3群同等だった(42.3% vs 35.3% vs 52.1%, p=0.30)。
 副作用はそれぞれ17.3%、8.8%、8.3%にみられた(p=0.33)。下痢などの消化器症状が主だった。

結論:
 この研究では、症状軽減、ウイルス陰性化をロピナビル/リトナビルおよびウミフェノビルが促進させる結果は得られなかった。





by otowelt | 2020-02-24 06:43 | 感染症全般

近畿中央呼吸器センター 呼吸器内科の 倉原優 と申します。医療従事者の皆様が、患者さんに幸せを還元できるようなブログでありたいと思います。原稿・執筆依頼はメールでお願いします。連絡先:krawelts@yahoo.co.jp


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