COVID-19:親子3人の家族内クラスター

COVID-19:親子3人の家族内クラスター_e0156318_822360.png 先日JAMAにも家族内クラスターの考察がありましたね。今回、Lancet Infectious Diseasesから親子3人の報告です。

・参考記事:COVID-19:家族内クラスターから考察した無症候性キャリアからのSARS-CoV-2伝播

Pan X, et al.
Asymptomatic cases in a family cluster with SARS-CoV-2 infection.
Lancet Infect Dis. 2020 Feb 19. pii: S1473-3099(20)30114-6. doi: 10.1016/S1473-3099(20)30114-6.


概要:
 過去に報告された家族内クラスターの報告では、ほとんどの人に臨床症状があり、リンパ球減少がみられ、胸部CT所見に異常が観察された。しかしながら、臨床症状がなくとも胸部CTで肺炎像がみられたRT-PCR陽性例も存在した。
 今回、われわれはSARS-CoV-2感染の家族内クラスターを報告する。3人の家族の報告であるが、臨床症状を有する1人は35歳男性(患者1)で、リンパ球数減少、胸部CT写真の異常、RT-PCR陽性がみられた。反面、2人の家族である33歳女性(患者2)、3歳男児(患者3)は、両方とも無症状でリンパ球数や胸部CT写真は正常だったが、RT-PCR陽性だった。
 2020年1月22日、患者1は武漢に妻(患者2)・息子(患者3)と高速鉄道で旅行した。1月26日、患者1に37.5℃の発熱がみられ、1日続いた。翌日、広州医科大学第3付属病院を受診した。その時の体温は37.4℃だった。同日、咽頭痛、関節痛、筋肉痛を訴えたが、悪寒や頭痛はなかった。患者1は1月27日から1月29日まで観察され、その間に体温は正常化した。1月27日、血液検査で白血球・リンパ球数も正常化したが、リンパ球比率は減少したままだった。胸部CT写真が症状発症から2日目に撮影され、両側多発性の葉性~亜区域性のGGO・浸潤影がみられた。2回の鼻咽頭スワブ検体が患者1におこなわれたが、いずれも陽性だった。
 患者2と3には、同じ観察期間(1月27〜29日)に徴候や臨床症状はなく、白血球数またはリンパ球数の減少もなかった。 1月28日にこれら2人の患者で撮影した胸部CT画像にも、特段の異常はなかった。ただし、患者1から採取した2回の鼻咽頭スワブ検体は、RT-PCR陽性だった。3人の家族全員がSARS-CoV-2感染と診断されたため、隔離と治療のために広州市第八人民医院の感染症部門に移送された。
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(文献より引用)

 この家族内クラスターの報告では、3人全員がSARS-CoV-2陽性となったが、臨床症状を訴えたのは1人のみだった。しかし、3人のうちのいずれかが最初に感染し、他の2人の家族にウイルスを感染させた可能性がある。ここで重要なのは、無症候性の患者(患者2および3)が疾患を認識していないため、自身を隔離したり、治療を求めたり、医療専門家によって見過ごされたりして、知らずにウイルスを他の人に感染させてしまうことである。この感染性の高い疾患をできるだけ早期に予防・制御するために、SARS-CoV-2感染症の家族を持つ人は、たとえ症状がなくても、感染を除外するために綿密な監視と検査をおこなう必要がある。




by otowelt | 2020-02-24 10:53 | 感染症全般

近畿中央呼吸器センター 呼吸器内科の 倉原優 と申します。医療従事者の皆様が、患者さんに幸せを還元できるようなブログでありたいと思います。原稿・執筆依頼はメールでお願いします。連絡先:krawelts@yahoo.co.jp


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