COVID-19:臓器傷害はサイトカインストームではなくウイルス感染そのものに起因

COVID-19:臓器傷害はサイトカインストームではなくウイルス感染そのものに起因_e0156318_1013880.png 朝のテレビでも「サイトカインストーム」がエライ取り沙汰されていましたね。ARDSはそうなんでしょうけど・・・。

Yishan Zheng, et al.
Comparative study of the lymphocyte change between COVID-19 and non-COVID-19 pneumonia cases suggesting uncontrolled inflammation might not be the main reason of tissue injury
medRxiv preprint doi: https://doi.org/10.1101/2020.02.19.20024885.


背景:
 COVID-19は2019年12月に中国武漢から発生し、世界中に拡大している。このウイルスは高い感染率を有し、特異な臨床的特徴を持つ。しかし、鍵となる病理学的メカニズムはよくわかっていない。そこで、ヒトの中におけるCOVID-19の主要な病理学的特徴を解明するべく、COVID-19患者の検査データを解析し、非COVID-19の肺炎と並行して比較検討した。

方法:
 COVID-19感染患者の検体の生化学所見とリンパ球を分析し、非COVID-19の肺炎症例のデータと比較した。この研究では、COVID-19の肺炎患者103人、非COVID-19の肺炎患者22人を登録した。検査所見は電子カルテから抽出された。リンパ球サブセットとフローサイトメトリー分析によるサイトカイン測定のために血液が採取された。

結果:
 合計125人が登録されCOVID-19は103人(55人が男性、平均年齢43.4±18.9歳)、非COVID-19の肺炎患者は22人(11人が男性、平均年齢36.7±10歳)だった。COVID-19患者のうち、重症が8人、非重症が71人、軽症が9人、無症候性が22人だった。
 COVID-19群と非COVID-19群では、CRP、LDH、AST、eGFR、Naに有意な差があり、COVID-19ではリンパ球サブセットの減少が観察された。相関解析では、リンパ球サブセットがCOVID-19の臓器傷害と逆相関しており、好中球や単球ではこれは当てはまらなかった。特にCD4陽性T細胞数がほとんどの生化学検査と有意な相関を示した。

結論:
 本研究では、COVID-19と非COVID-19の臨床的特徴に有意な差があり、特にリンパ球減少は臓器傷害と関連していることが分かった。特に、相関解析により、COVID-19患者の臓器傷害が、制御されてない炎症反応(いわゆるサイトカインストーム)ではなく、ウイルス感染そのものに起因することを示している。




by otowelt | 2020-02-25 07:46 | 感染症全般

近畿中央呼吸器センター 呼吸器内科の 倉原優 と申します。医療従事者の皆様が、患者さんに幸せを還元できるようなブログでありたいと思います。原稿・執筆依頼はメールでお願いします。連絡先:krawelts@yahoo.co.jp


by 倉原優
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