COVID-19:81例の胸部CT所見の推移
2020年 02月 25日

・参考記事:COVID-19:肺炎の胸部CTの経時的所見
・参考記事:COVID-19:94例の胸部CT所見の推移
Heshui Shi, et al.
Radiological findings from 81 patients with COVID-19 pneumonia in Wuhan, China: a descriptive study
Lancet Infectious Diseases, DOI:https://doi.org/10.1016/S1473-3099(20)30086-4
背景:
SARS-CoV-2によって引き起こされるCOVID-19による肺炎患者の集団発生は、中国武漢から報告さえた。われわれは、疾患の経過ごとのCT所見の違いについて記述する。
方法:
次世代シークエンスあるいはRT-PCRでCOVID-19と診断された患者で、武漢にある2病院(武漢市金銀潭医院あるいは華中科技大学同済医学院)のいずれかに入院し、連続的に胸部CT検査を撮影された人を後ろ向きに同定した。患者は、症状発現から初回の胸部CT撮影までの時間によって4群に分けられた。
グループ1:症状発症前に胸部CTを撮影された無症候性の患者 グループ2:症状発症から1週間以内に胸部CTを撮影された患者 グループ3:症状発症から1~2週間に胸部CTを撮影された患者 グループ4:症状発症から2~3週間に胸部CTを撮影された患者 |
これら4群の画像所見や分布を解析し、比較した。
結果:
2019年12月20日~2020年1月23日に81人のCOVID-19患者が入院した。42人(52%)が男性で、39人(48%)が女性だった。平均年齢は49.5±11.0歳である。合併症は、糖尿病10人(12%)、高血圧12人 (15%)、慢性呼吸器疾患9人(11%)、心血管疾患8人(10%)だった。
発熱は59人(73%)にみられた。咳嗽は48人(59%)、呼吸困難は34人(42%)にみられ、グループ2よりもグループ4のほうが頻度が高かった(p<0.0001)。本研究では末梢血リンパ球数に増減は観察されなかった。
異常がみられた肺の区域数は10.5±6.4で、グループ1は2.8±3.3、グループ2は11.1±5.4、グループ3は13.0±5.7、グループ4は12.1±5.9だった。
画像所見は、両側性(64人[69%])、末梢性(44人[54%])、辺縁不整(66人[81%])、GGO(53人[65%])が多くみられ、主に右下葉に観察された(225人[27%])。
グループ1(15人)では、片側(9人[60%])、多発性(8人[90%])、GGO(14人[93%])が多くみられた。これらの陰影はグループ2(21人)になると、両側性(19人[90%])、びまん性(11人[52%])、GGO(17人[81%])と進展した。その後、グループ3(30人)・グループ4(15人)では、GGOは減少していき(それぞれ17人[57%], 5人[33%])、浸潤影や混合性パターンがよくみられるようになった(それぞれ12人[40%]、8人[53%])。


2020年2月8日時点で、62人(77%)が退院していた。症状発現から退院までの平均期間は23.2±6日だった(範囲12-41日)。
結論:
COVID-19の肺炎は、無症候性でも胸部CT写真の異常がみられることがあり、すみやかに片側限局性からびまん性両側性GGOへ進展し、1-3週間で浸潤影を混じるようになる。画像所見と臨床・検査所見を組み合わせて評価することは、COVID-19の肺炎の早期診断に有用かもしれない。
by otowelt
| 2020-02-25 13:06
| 感染症全般

近畿中央呼吸器センター 呼吸器内科の 倉原優 と申します。医療従事者の皆様が、患者さんに幸せを還元できるようなブログでありたいと思います。原稿・執筆依頼はメールでお願いします。連絡先:krawelts@yahoo.co.jp
by 倉原優
ファン申請 |
||