COVID-19:武漢の死亡率が高い原因

COVID-19:武漢の死亡率が高い原因_e0156318_1013880.png 重要な考察です。Lancet Global Healthは、実は普段ほとんど読んでいません。

Yunpeng Ji, et al.
Potential association between COVID-19 mortality and health-care resource availability
Lancet Global Health, DOI:https://doi.org/10.1016/S2214-109X(20)30068-1


概要:
 進行しているCOVID-19の流行は、制御手段を講じているにもかかわらず、壊滅的な状況である。流行は、中国湖北省の武漢で発生し、湖北省のさまざまな地域や中国全土に急速に広がった。中国CDCが記録したように、2020年2月16日までに、COVID-19の確定例70641人と、死亡者1772人が報告されており、平均死亡率は約2.5%である。ただし、これらのデータの詳細な分析では、死亡率は武漢(> 3%)、湖北省の異なる地域(平均で約2.9%)、中国の他省(平均約0.7%)となっている。これは、アウトブレイクの震源地周辺での感染数の急速な増加に関連している可能性が高いと仮定される。中国の他の省と比較して、医療資源が不足し湖北省の患者転帰に悪影響を及ぼしている。
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(湖北省と他の省の比較:文献より引用)
 
 ヘルスケアの平均レベルが中国全土で同等であると仮定すると、人口集団に起因する感染数の増加が、ヘルスケアの負担の間接的指標とみなすことができる。COVID-19の発生に対する死亡率のプロット(アウトブレイク以降の確認された症例累積数[10000人あたり])は、有意に正の相関を示し、死亡率が医療負担と相関していることを示唆している。
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(患者数と死亡率:文献より引用)

 現実的には、中国の医療資源の利用・アクセスにはかなり地域差がある。このような格差により、浙江省(1171例中死亡者0人)や広東省(1322例中死亡者4人[0.3%])などの発達した南東沿岸地域の死亡率が低かったのだろう。
 中国政府は、アウトブレイク震源地で医薬品に関連する物流上のハードルを認識しており、速やかな流通、大規模かつ強力な医療派遣、新しい地域医療施設の建設を国をあげて取り組んでいる。これらの対策は、流行を制御し、最前線の医療従事者を保護し、重症患者の転帰を緩和するために不可欠である。
 死亡率と医療資源のアクセスの潜在的関連性を知ることは、この流行に苛まれている中国の他地域が準備をする上で役立つかもしれない。また重要なことに、COVID-19はすでに北アフリカの1ヶ国を含む世界の29ヶ国に影響を及ぼしているため、中国のこの状況を知ることは、他の資源の限られた地域でのCOVID-19発生に備える上で役立つかもしれない。




by otowelt | 2020-02-26 04:42 | 感染症全般

近畿中央呼吸器センター 呼吸器内科の 倉原優 と申します。医療従事者の皆様が、患者さんに幸せを還元できるようなブログでありたいと思います。原稿・執筆依頼はメールでお願いします。連絡先:krawelts@yahoo.co.jp


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