COVID-19:死亡例82例の臨床的検討

COVID-19:死亡例82例の臨床的検討_e0156318_17185130.png 死亡例をまとめた報告は初めてです。プレプリントですが。

Bicheng Zhang, et al.
Clinical characteristics of 82 death cases with COVID-19
medRxiv preprint doi: https://doi.org/10.1101/2020.02.26.20028191


背景:
 中国武漢で発生したSARS-CoV-2による肺炎は世界中に広がっている。われわれは、単施設におけるCOVID-19の死亡者82例についての臨床的特徴を報告する。

方法:
 SARS-CoV-2感染が確認された82の死亡例に関する臨床データを、事前に設計された標準化されたデータ収集フォームに従って、武漢地方病院の電子カルテ記録から取得した。

結果:
 全例武漢の住民であった。入院時、そのほとんどが重症であった。死亡した65.9%が男性であり、死亡者の80.5%が60歳以上だった(年齢中央値は72.5歳)。死亡例の76.8%に基礎疾患があった。高血圧56.1%、心疾患20.7%、糖尿病18.3%、脳血管疾患12.2%、癌7.3%と続いた。呼吸不全は死亡の主たる原因だった(69.5%)。敗血症/多臓器不全が20.8%、心不全が14.6%、腎不全が3.7%にみられた。
COVID-19:死亡例82例の臨床的検討_e0156318_12163977.png
(82人の背景:文献より引用)

 入院時、リンパ球減少が89.2%に、好中球増多が74.3%に、血小板減少が24.3%にみられた。ほとんどの患者は好中球/リンパ球比率が5を超えていた(94.5%)。CRP上昇は100%、LDH上昇は93.2%、D-ダイマー上昇が97.1%にみられた。IL-6は全例上昇していた。
 症状発現から死亡までの期間の中央値は15日(IQR11-20日)だった。興味深いことに、症状発現から死亡までの期間と有意な関連があったのは、血清AST・ALTだった。

結論:
 基礎疾患のある高齢者はSARS-CoV-2に感染すると、重症になりやすく死亡しやすい。主たる死因はCOVID-19による呼吸不全であるが、ウイルスそのもののサイトカインストームにより深刻な臓器傷害が引き起こされることも起因しているかもしれない。




by otowelt | 2020-02-28 12:18 | 感染症全般

近畿中央呼吸器センター 呼吸器内科の 倉原優 と申します。医療従事者の皆様が、患者さんに幸せを還元できるようなブログでありたいと思います。原稿・執筆依頼はメールでお願いします。連絡先:krawelts@yahoo.co.jp


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