COVID-19:SARS-CoV-2のPCR陰性化後陽転

COVID-19:SARS-CoV-2のPCR陰性化後陽転_e0156318_17185130.png 今、話題のやつですね。MERSでも長く排出されることがあったので、ありえるとは思います。それが感染性を持つかどうかがネックですね。

Lan Lan, et al.
Positive RT-PCR Test Results in Patients Recovered From COVID-19
JAMA. Published online February 27, 2020. doi:10.1001/jama.2020.2783


背景:
 過去のCOVID-19に関する研究は、主に感染が確認された患者の疫学的、臨床的、放射線学的特徴に焦点を当てていた。

方法:
 2020年1月1日から2020年2月15日まで、1人の入院患者とCOVID-19で自宅で隔離された3人の患者(すべての医療関係者)は、中国武漢にある武漢大学中南病院で治療され、職場に復帰してよいかの判断のためにリアルタイムRT-PCRで評価された。退院あるいは検疫中止については、以下の5基準を満たす必要があった。(1)正常常温が3日以上続く、(2)呼吸器症状が軽快、(3)胸部CTでの急性の陰影がほぼ改善、(4)少なくとも1日あけた2回連続のRT-PCR陰性。
 RT-PCR検査は、咽頭スワブで採取された。RT-PCRキットは中国CDCによって推奨されたものを使用した。報告された全てのRT-PCRについては、同じ技師が行い同じキットが使用された。インターナルコントロール(PCR阻害の有無を判別するために使用)とネガティブコントロールの両方が、検査の各バッチでルーチンにおこなわれた。
 患者背景、検査所見、放射線学的特徴が電子カルテから収集された。病状が回復した後、患者およびその家族と直接連絡をとり、RT-PCRのための咽頭スワブを受けるために病院に来るよう依頼した。

結果:
 医療従事者4人全員が、業務を通じてSARS-CoV-2に曝露された。そのうち2人は男性だった。年齢範囲は30〜36歳だった。3人の患者において、発熱、咳嗽、またはその両方が発症時にみられた。1人の患者は、初期は無症候性であったが、感染した患者に暴露したため胸部CT検査を受けた。全患者のRT-PCR検査結果は陽性で、胸部CT画像ではすりガラス陰影、または混合すりガラス陰影や浸潤影がみられた。疾患重症度は軽度~中等度だった。
 抗ウイルス薬(オセルタミビル75mgを12時間ごとに経口投与)が4人の患者に投与された。3人の患者は全員、臨床症状とCT画像所見が軽減した。4人目の患者のCT画像ではわずかな斑状のすりガラス陰影がみられた。4人の患者全員が2回連続でRT-PCR陰性を確認された。症状の発現から回復までの期間は12〜32日間だった。
 退院または検疫中止後、患者は自宅で検疫プロトコルを5日間継続するように求められた。RT-PCRは5~13日後に再検査されたが、全て陽転化していた。全患者は、さらに次の4〜5日間に3回のRT-PCR検査を繰り返したが、やはり全例陽性だった。別のメーカーのキットを使用して追加のRT-PCRテストを実施したが、結果は全患者で陽性だった。患者は無症状のままで、胸部CT所見は以前の画像からの変化を示さなかった。この間、呼吸器症状のある人との接触は報告されていない。家族は誰も感染していなかった。

ディスカッション:
 中国で退院または検疫中止の基準(臨床症状と放射線学的異常がなく、2回のRT-PCR陰性を確認)を満たしたCOVID-19の4人の患者は、5〜13日後にRT-PCRが陽転化した。これらの知見は、回復した患者の少なくとも一部がまだウイルスキャリアである可能性を示唆している。家族は感染していなかったが、今回報告された患者はすべて医療従事者であり、検疫中には特段の配慮をしていた。このため、退院または検疫中止基準を再評価する必要がある。過去の研究で示唆されたように、偽陰性のRT-PCRだった可能性は残るものの、2連続陰性であることに加え臨床的特徴および胸部CT所見から全例退院または検疫中止は妥当であった。




by otowelt | 2020-02-28 15:41 | 感染症全般

近畿中央呼吸器センター 呼吸器内科の 倉原優 と申します。医療従事者の皆様が、患者さんに幸せを還元できるようなブログでありたいと思います。原稿・執筆依頼はメールでお願いします。連絡先:krawelts@yahoo.co.jp


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