COVID-19:江蘇省における80例の臨床的検討

COVID-19:江蘇省における80例の臨床的検討_e0156318_17185130.png COVID-19の論文紹介は、これで50記事目になります。ようやく、CIDから出ましたね。感度の問題があるのでしょうが、2回の陰性を信じてはいけない、となると・・・。

Wu J, et al.
Clinical Characteristics of Imported Cases of COVID-19 in Jiangsu Province: A Multicenter Descriptive Study.
Clin Infect Dis. 2020 Feb 29. pii: ciaa199. doi: 10.1093/cid/ciaa199.


背景:
 われわれは、江蘇省におけるCOVID-19患者の臨床的特徴を報告する。

方法:
 2020年1月22日~2月14日のあいだに、グレードIIIAの江蘇省の病院において、WHO指針によってCOVID-19と確定された患者の臨床的・画像的・検査的な特徴を後ろ向きに検討した。気道検体に対してリアルタイムRT-PCRが用いられた。

結果:
 塩城市および無錫市のCOVID-19患者80人のうち、41人が女性で、年齢中央値は46.1歳だった(IQR 30.7-61.5歳)。3人の重症例を除くと、残り77人は軽症あるいは中等症の症状だった。
 41人(51.25%)が初回のPCR検査で陽性となり、30人(37.50%)が2回目のPCR検査で陽性となり、9人は3回目のPCR検査まで確定されなかった。
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(文献より引用)

 38人は慢性疾患を有していた。主な症状は発熱と咳嗽で、それぞれ63人(78.75%)、51人(63.75%)にみられた。呼吸困難が30人(37.50%)にみられた。
 36人(45%)の白血球数が正常よりも減少しており、26人(32.5%)はリンパ球が減少していた。また、3人(3.75%)に肝機能障害がみられた。
 55人(68.75%)に胸部画像上異常がみられ、25人(31.25%)は両肺実質に陰影は観察されなかった。
 すべての患者はエンピリックに抗菌薬が投与されており、主にモキシフロキサシンだった。抗菌薬は中央値7日間継続された(IQR4-9日)。また、全患者はリバビリンによる抗ウイルス治療を受けていた(中央値7日間、IQR4-9日)。12人(14.63%)がメチルプレドニゾロンを使用されていた(中央値5日、IQR3-8日)。人工呼吸器を装着された患者はいなかった。3人は漢方薬を使用されていた。
 現時点で21人が退院し、死亡例はなかった。退院患者の平均入院期間は8日だった。

結論:
 武漢の症例と比べて、江蘇省は軽症~中等症が多く、明らかな性別による影響はなかった。武漢の症例よりも肝機能障害や胸部CT異常は少なかった。特筆すべきこととして、2回のPCR検査陰性で誤ってCOVID-19が除外される可能性がある。




by otowelt | 2020-03-01 09:26 | 感染症全般

近畿中央呼吸器センター 呼吸器内科の 倉原優 と申します。医療従事者の皆様が、患者さんに幸せを還元できるようなブログでありたいと思います。原稿・執筆依頼はメールでお願いします。連絡先:krawelts@yahoo.co.jp


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