COVID-19:ダイヤモンドプリンセス号の対策はベストだったか?

COVID-19:ダイヤモンドプリンセス号の対策はベストだったか?_e0156318_21331837.png ダイヤモンドプリンセス号関連の論文2つ目です。

・参考記事:COVID-19:ダイヤモンドプリンセス号における基本再生産数

 アウトブレイク早期に全員おろしても、どのようにして彼らを観察するのかという問題が立ちはだかる。

Rocklöv J, et al.
COVID-19 outbreak on the Diamond Princess cruise ship: estimating the epidemic potential and effectiveness of public health countermeasures.
J Travel Med. 2020 Feb 28. pii: taaa030. doi: 10.1093/jtm/taaa030.


背景:
 クルーズ船は、比較的均一に混合された限られたスペースで多数の人を乗せている。2020年2月3日に、COVID-19のアウトレブイクがダイヤモンドプリンセス号で発生した。1月21日~25日に1人目の症例に引き続き10例が報告された。2月4日までに、発症した乗客の搬送と隔離、また発症していない乗客の検疫などの公衆衛生対策が実施された。2月20日までに、3700人の乗客・クルーのうち619人(17%)がSARS-CoV-2陽性である。

方法:
 われわれは、SEIRモデルを用いてアウトブレイク初期の基本再生産数を推定した。3700人の乗客が均一な集団であるという想定、および1000人のクルーと2700人の乗客を異質な集団として分けて想定した場合のモデルで検討した。さらに、対策がなかった場合の反事実的なシナリオも推定した。

結果:
 初期は、アウトレブイクが起こった武漢中心部の基本再生産数の4倍だったが、ダイヤモンドプリンセス号の対策により大幅に低下した。1月21日から2月19日の間に介入がなければ、3700人のうち2920人(79%)が感染していたと推定された。ゆえに隔離と検疫により2307人の感染を防ぐことができ、基本再生産数は1.78まで低下した。2月3日までにダイヤモンドプリンセス号を全員が降りておれば、潜伏期間から感染者は76人に抑えられていたかもしれない。
COVID-19:ダイヤモンドプリンセス号の対策はベストだったか?_e0156318_7573389.png
(隔離と検疫の効果:文献より引用)

結論:
 クルーズ船は、高度にウイルスを伝播させる環境にあった。公衆衛生対策は、介入がなかった場合と比較して2000人以上の追加感染例を予防した。しかし、アウトブレイクの早期の段階で、すべての乗客とクルーを避難させていたら、さらに多くの乗客とクルーの感染が予防できたかもしれない。




by otowelt | 2020-03-03 07:59 | 感染症全般

近畿中央呼吸器センター 呼吸器内科の 倉原優 と申します。医療従事者の皆様が、患者さんに幸せを還元できるようなブログでありたいと思います。原稿・執筆依頼はメールでお願いします。連絡先:krawelts@yahoo.co.jp


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